すでにツイッターでお知らせしましたが、先月11日に入館した深海のウニHeterobrissus niasicus(和名なし)が死亡したため、残念ながら本日で展示終了となりました。
これまでの飼育日記で何度か紹介していますが、このウニは三重県の熊野灘の水深300m付近で1年に1度捕れるか捕れないかという激レア種。
本種が日本近海に分布するという正式な報告すらありません。
鳥羽で2回、愛知県の竹島水族館さんに1回の搬入例が、私が把握しているわずかな国内記録。
フィリピン周辺では水深100mあたり、熊野灘では水深300mで採集されるので、その間の海域にもきっと生息しているはずです。
貴重なウニなので、死亡後も標本にして保管。
最初の個体(去年)はアルコールで液浸標本にしたので、今回は棘を取り除いて乾燥標本にすることに。
こちらが反口側(背)
そして口側(腹側)
中央に口があります。
前回(去年)は、入館直後から動きが全く確認できなかったので、既に死亡しているものと判断して液浸標本にしたのですが…
今回はとりあえずへんな生きもの研究所の水槽に搬入して様子を見ることにしました。
最初の数日はやはり全く動かない。
こりゃ完全に死んでいるな、と思っていたのですが…
日が経つにつれて少しずつ活動的になり、ついには排便も確認。
排便前に肛門が突出するなんて初めて知りました。貴重な行動記録です。
かなりしっかりとした便をします。
…ということは、去年の個体ももしかしたら生きていたのかも知れません。
でも、あの時はわからなかった。まさかこれほど動きが少ないとは…
深海の生物はわからないことだらけ。それでもこうやって手さぐりで経験を重ねることで少しずつ情報が蓄積されていきます。
一歩づつ前に進めばいつの日か…