先日深海底引きで採集したウニPrionechinus forbesianusに寄生貝ヤドリニナの仲間が寄生していたとお伝えしましたが…専門家に問い合わせたところ、まだ名前が付けられていない未記載種である可能性が高くなってきました。
おぉ!…ですが、今回はその貝の話題ではなくウニの叉棘(さきょく)についてです。
叉棘はウニやヒトデ類の体表にある特殊な小さなトゲで、通常4種類あります。
分類形質として有効なので、よく似たウニの種類を判別する指標になります。
中にはピンセットのような形をしているものもあり、体表の付着物を取り除いたり小動物を捕らえたりする役割がある、とも考えられています(実際にはほとんど検証されていないようですが)
さて。
今日、貝に寄生されたウニを見ていて気が付きました…
こいつ、ピンセットみたいな爪状叉棘(矢印)がめちゃくちゃ目立ってる…よく動かしているし。
今まで観察した他の個体ではこんな爪状叉棘なんて目に付かなかったんだけどなぁ…
例えば、ほぼ同じ殻径(12㎜)の別個体だと、こんな感じ。
もしかして…貝に寄生されるとそれを取り除こうと爪状叉棘が発達する/目立つとか?
ともあれ、このような観察例はほとんどないらしく、はっきりしたことはわかりません。
顕微鏡でも観察してみようと水槽から連れ出しましたが…照明が明るすぎるのか爪状叉棘が閉じてしまってなかなか見えづらい。
水槽の中でははっきり確認できたのになぁ…
それでも、何とか撮影。
ピンセットみたいに見える開閉する部分(弁・3枚あります)は、0.7mmほどの長さ。
貝に寄生されていない個体も顕微鏡で確認しましたが、やはりこんな爪状叉棘は確認できませんでした。
不思議…
ちなみに、貝とその卵嚢が環状に並んでいますが、その内側にも外側にも爪状叉棘は存在するようです。
ウニの叉棘と寄生貝の関係、気になります。
などと観察していると…おぉ!ヤドリニナの卵嚢からベリジャー幼生が孵化しはじめました。
幅0.12mmほど、ですね。