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鳥羽水族館 飼育日記 鳥羽水族館 飼育日記

ヒトデ好きの少年から嬉しいメールが届きました。

先日、飼育日記のお問い合わせコーナーに嬉しいメールが届きました。

ちょっと紹介させてください。

神奈川県の新小学5年生はるきくんからのメールです。

「いつも飼育日記を楽しく読んでいます。ユミヘリゴカクヒトデの解剖のお話がとてもおもしろくて、何度も読み返しました。ぼくも、拾ったモミジガイに何かが寄生しているかもしれないと思って解剖してみました。残念なことに、寄生虫は見つかりませんでしたが、黒や、オレンジのいろいろな器官を見る事ができました。もりたきさんは、いつもいろいろなおもしろい生き物を飼育したり採集したりしていてとても楽しそうで、ぼくもいつかそんなお仕事ができたらいいなと思います(後略)」

あぁ…あんなヒトデの寄生虫の話題…しつこくて呆れている読者もいることでしょう、かわいい生きものが読みたい方もたくさんいることでしょう…(でも全く気にせず書き込んでますけど)

それをこんなに楽しみにしてくれている小学生がいるとは!嬉しい。感謝です。

…ということで、今回もヒトデの寄生虫です。

 

さんざん書き込んでいるのでご存じでしょうが(笑)熊野灘の沖合底引き網で採集されるヒトデの体内から寄生性甲殻類のシダムシや寄生性多毛類のスイクチムシが見つかります。

去年の秋に確認して以降、これまでに知られていなかった種類(未記載種)が複数見つかっていますが、興味深いことに寄生するのはシダムシとスイクチムシのどちらか一方。

つまり…

Lithosoma japonica(シダムシが寄生)

・ユミヘリゴカクヒトデ(シダムシ)

・ヒメヒトデ属の一種(スイクチムシ)

・カンムリヒトデ(スイクチムシ)

・トゲニチリンヒトデ(スイクチムシ)といった感じ。

シダムシとスイクチムシは棲み分けをしているのでしょうか?(注:各々のシダムシ、スイクチムシはそれぞれ異なる種類です)

 

そんな中で唯一の例外がウデナガゴカクヒトデ。

スイクチムシとシダムシの両方が見つかっています。

 

ウデナガゴカクヒトデから見つかったシダムシの一種 幅17mmほど

ウデナガゴカクヒトデから見つかったスイクチムシの一種 幅5mmほど

ところが両種の寄生率はかなり低くて、これまでに113個体を調べてシダムシの寄生は1例のみ(寄生率0.8%)、スイクチムシは7例(寄生率6%)

これは他のヒトデのシダムシ、スイクチムシの寄生率と比較してもかなり低い割合になります(他は30%程度)

 

おまけに1個体のヒトデから見つかるのはシダムシもスイクチムシの場合も1匹だけ。

寄生率がこれだけ低くて、ヒトデの中に1匹だけとは…

どうやって繁殖しているのか、不思議です。

(ちなみに、シダムシは通常、メスの体の中に小さなオスがかくれています。また、スイクチムシは基本的に雌雄同体です。ということは、1匹で自家繁殖しているのでしょうか?)

このあたりのことも明らかにすることができれば面白いでしょうね。

【飼育研究部 森滝丈也】

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