先日、予備水槽を見ると、5月に熊野灘の沖合底引き網で採集したタカアシガニが するんと脱皮していました。
お見事!(左が脱皮殻)
でも、今回は脱いだ方ではなく、脱ぎ捨てられた方の話題です。
タカアシガニの体には数種のエボシガイ類が共生してます。エボシガイはフジツボに近縁な甲殻類の一群で、大型のカニやエビに付着して共生する種が知られています。
カイと言っても、ホリくん推しの「貝」では、ありませんが。
さて、タカアシガニの甲全体に付着するのはヒメエボシですが、脱皮のタイミングで一気に脱ぎ捨てられてしまうようです。
こうした付着生物が脱皮とともにリセットされるのは面白いですね。
果たして脱ぎ捨てられたあともエボシガイ達は生存できるのか、個人的に興味があります。
脱皮後の殻を観察していると、口の周囲には別種のマルヒメエボシが付着していることに気付きました。
マルヒメエボシは口の周囲を選んで付着します。この“棲み分け”のような生態は非常に興味深いです。
今回は特に、左右の第2顎脚の先端にそれぞれ1匹ずつマルヒメエボシが付いており、まるで対になっているかのような配置でした。
たまたまなのかもしれませんが、こうした偶然のような現象にも生物の不思議さを感じます。
マルヒメエボシは情報が少ないようなので、標本として残しておきます。
【飼育研究部 森滝丈也】






