先日の飼育日記で紹介した、水深200mから見つかった「叉棘キノコ(仮称)」
深海の謎生物の正体は一体!?…複数の研究者から叉棘がヒトデのものに似ているから棘皮動物ではないか?と指摘がありました。
深海の沈木にはシャリンヒトデという珍しい棘皮動物(日本近海からは未発見)がいるので、実際、私もこれはもしかしたら…と興奮しました。
こんな風に沈木の隙間に隠れていたら、そりゃそれっぽいでしょう?(実際のシャリンヒトデとは形態は異なりますが)
ところが、そのあと別の研究者から「抜け落ちたヒトデ類の叉棘鞘ではないでしょうか?」との意見を頂いたのです。
不勉強にして私は叉棘鞘(さきょくしょう)という器官を知らなかったのですが、教えてもらった論文の図を見ると確かにそっくり。
特にマヒトデ科やタコヒトデ科の叉棘では、棒状の骨を中心にこのようなクラスターを作るものがあるとのこと。
どうやら「叉棘キノコ(仮称)」は謎生物ではなく、ヒトデの体の一部の可能性が高くなってきました。
あ、タコヒトデ科と言えば…底引き網によくかかるのがこのカンムリヒトデ(一部の腕が欠損)なんかがそう。
もしかして、コイツが謎生物の正体か…
さっそく自切した腕を観察してみました。
って、すでにこの時点で「きのこの山」状態なのは明らかだし。
拡大すると…
そこには、はい「叉棘キノコ(仮称)」っ!(苦笑)
どうやら、謎生物の正体は、抜け落ちたこのカンムリヒトデ(か、その近縁種)の叉棘鞘ということで「一件落着」となりそうです。
ん…残念。
でも、深海をはじめ海の生物はまだまだ知られていないことが多いのは事実。
これからも懲りずに、おぉ!と感じたことを『興奮さめやらぬうちに』書き込んでいきたいと思っています。
追記:ちなみに、カンムリヒトデは深海底引き網でめちゃくちゃたくさん採れます。
【飼育研究部 森滝丈也】