先日の木曜日は、いつもお世話になっている底引き網漁船「甚昇丸」に乗船し、沖合での生物採集に出かけてきました。今回の採集は紀伊長島沖、水深200〜300mほどの海域。
採集作業は深夜から日没までと長丁場。漁師さんたちが網を引き上げるたびに、その中から調査・展示に適した生きものを選別していきます。地味ながらも体力勝負の一日です。
今回、特に目立ったのは、多くの貝類が採集されたことです。クマサカガイやマツカワガイなどがいつも以上に多く見られ、この海域が貝にとって豊かな環境であることを改めて実感しました。これらの貝の一部は、6月14日から開催される特別展「貝展 こんなんおったんカイ!」でもご紹介できそうです。
また、クマサカガイやマツカワガイの殻の表面には、久しぶりにイッスンボウシウロコムシの姿を確認することができました。矮雄(小型のオス)がメスの背面にひそむこの不思議なウロコムシは、まさに熊野灘の深海ならではの生物といえるでしょう。
その他にもヒラアシクモガニや
ヒメキンカライソギンチャクを背負うユニークなジンゴロウヤドカリや
さらにはまだ名前のついていないタコ(未記載種)など、今回だけで40種を超える生物を採集できました。
アカグツも
こうした採集は、鳥羽水族館の展示や飼育研究の貴重な礎になります。今後の展示にもぜひご注目ください!
【飼育研究部 森滝丈也】