熊野灘で発見、2017年に新種記載されたカンムリヒトデスイクチムシは、カンムリヒトデの胃の中に寄生しています。ヒトデの口(周口膜)を透して、たまにその姿を見ることができます。
ヒトデに対して特に悪さをするわけではないので、寄生と言うよりも共生と言った方が適当かもしれません。こう見えてゴカイの仲間です。
底曳き網採集で新しい個体が採れると、水槽にいるカンムリヒトデに近づけて、スイクチムシがヒトデにどのように寄生するのか行動観察をしています。
エサ(オキアミ)をヒトデの腕に近づけると、匂いに反応したヒトデは餌を丸飲みしようと体全体をエサの方に移動させますが、スイクチムシの場合は行動がちょっと違います。
スイクチムシを腕に近づけると、管足だけをワサワサ動かしてスイクチムシを口の方へ運んでいきます。単順にエサと勘違いしているわけではなさそうです。
個人的に、この管足をワサワサ動かしてスイクチムシを運ぶ行動を見るのが好きで、どこか某アニメ映画(王蟲が出てくる映画)のワンシーンを彷彿とさせます(笑)
自発的に口の中に運び入れていることから見ても、スイクチムシの寄生(共生)はカンムリヒトデにとっては当たり前の、問題ないことだと思われます。
【飼育研究部 森滝丈也】