ヒトデの歩帯溝(管足が並ぶ部分)に寄生するAsteromyzostomum属スイクチムシ(多毛類・ゴカイの仲間)
この仲間は北極から3種、南極から1種が知られているだけで、日本近海から見つかったという報告はありません。
それが昨シーズン、今シーズンと熊野灘の水深300mから採集されました。
既に知られている種類なのか違うのか、詳細はこれから調べていかねばいけませんが、いずれにしても極地方以外でも見つかったことは大変興味深い。
ヒダヒダのキノコのような奇妙な姿をしています。
一方、こちらはあまりヒダヒダになっていない若い個体。
スイクチムシは雄性先熟の雌雄同体なので、この若い個体はおそらく機能的には♂
で、こちらが成熟した個体(おそらく機能的には♀)
これはヒトデの組織を切り取って内側から見られるようにしています。
根のような周口触手がヒトデの体の中に張り巡っています(矢印)
ん~寄生植物のようですね。
さて、先日このスイクチムシの興味深い行動を目撃しました。
寄主のニチリンヒトデは9腕なので歩帯溝は9本ありますが、1番目と3番目の歩帯溝に成熟個体(機能的にはおそらく♀)が寄生していました。
一方、9番目の歩帯溝には若い個体(機能的にはおそらく♂)が。
こいつはけっこう自由に動き回り、9から8番目の歩帯溝へ移動したり…
成長すると寄生場所から動けなく(動かなく)なるので、繁殖のために雄が雌の元へ通うのではないかと推察しています。
【飼育研究部 森滝丈也】