昨日は毎月恒例の熊野灘沖合底引き網生物採集に行ってきました。
紀伊長島の沖合底引き網漁船「甚昇丸」さんのお世話になり、紀伊長島の沖合、水深150-300mを朝4時から夕方まで。
最近は船に乗っても全く酔わないので、三度の食事が楽しみです。
いつもは網を掛ける場所や深度によって捕れる生物が様々ですが、今回の漁はヒゲナガエビ(通称ガスエビ)狙いでほぼ同じ深さ(300m)に網を掛けていたため、毎回の採集物はほぼ同じ。
水族館用に拾い集めた中で特に多かったのはウデナガゴカクヒトデ。
(実際は、カンムリヒトデがたくさん採れていますが、このヒトデは死にやすいのでほとんど水族館には持ち帰りません)
さて。
このウデナガゴカクヒトデにはずっと探し求めているシダムシがいます。
シダムシとはヒトデの体腔に寄生する甲殻類で、日本から正式に報告されているのは3種類ですが、その他に未記載種が4種類ほど知られています。
これまでに熊野灘の漸深帯からシダムシの報告はありませんでしたが、今シーズンだけで新たに3種類も見つけました。
中でもウデナガゴカクヒトデのシダムシはかなり珍しく、これまでに150匹以上のウデナガゴカクヒトデを解剖しましたが、見つかったのは1月に採集したこの1個体だけ。
この半年間、ずっと探し続けていました。
それが、昨日…甲板に落ちていた4腕のウデナガゴカクヒトデにふと気付き、何気なく体を裂いて中身を確認したところ…
大興奮のまま、水族館に持ち帰るとじっくりと解剖。
からだに卵(あるいは幼生)が充満しています。
1月の個体は卵を持っていなかったので、この時期が繁殖期なのでしょうか…
ともかく、激レア種の追加標本が見つかったことで、シダムシ研究がさらに進みそうでワクワクします。
【飼育研究部 森滝丈也】