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鳥羽水族館 飼育日記 鳥羽水族館 飼育日記

はるかの左下顎歯

ヒトの歯は乳歯の下から永久歯が生えてきますが、マナティーを含む海牛類はそれとは違う変わった歯の生え替わり方をします。

顎の奥側で生えた歯が徐々に前へ押し出されながら移動していき、口側から見れば一番手前の歯から順に脱落するのです(水平交換)

この脱落歯が時々、水槽の底で見つかります。

先日、福島県から化石種海牛類の研究者ら3名が来館し、その脱落歯と当館で飼育していた「はるか」の骨格を観察していかれました。

その過程で驚く指摘(発見)が!

はるかの左下顎の歯の生えかたが明らかに奇妙だったのです(矢印)

左下顎の全ての歯がほぼ90°に内転していて、本来 頬側に来るべき面が正面を向いてしまっています。

よく見ると、最初に生える奥の歯から既におかしな生え方になっています。

最初の歯の向きがおかしいため、そのままの向きで前へ押し出されている格好に…

これはどうやら先天的な異常のようです。

そのせいで、はるかの噛み合わせは悪かったようで、左下顎の歯はほとんど磨耗していなかったことが判明しました。

とは言え、アフリカで成獣になるまで育ち、水族館入館後も18年間生存したことから、この歯の異常は直接はるかの生命を脅かすようなものではなかったと推測されます。

異常というよりも、はるかの個性だったと表現した方が良いかも知れません。

 

もしかしたら、こういった歯の並びの変異はある程度の頻度で起こりうることなのかも知れません。

(マナティーに関する基礎データが少ないため現時点では判断できませんが)

 

ともあれ、今年はアフリカマナティー飼育20年目。

このタイミングではるかの秘密(個性)が明らかになったことに驚いています。

【飼育研究部 森滝丈也】

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