現在、へんな生きもの研究所でクマサカガイをひっそり展示しています。
クマサカガイは自分の貝殻に小石や他の貝殻をくっつける不思議な習性をもった巻き貝です。では、なぜそんなことをするのでしょうか?
その理由は諸説あり、たとえば「貝殻の補強」「カモフラージュ(擬態)」「泥の中に沈みこまないようにするため」などが挙げられています。どれも、深海で生き抜くための工夫なのかもしれません。
興味深いのは、二枚貝をくっつけるとき、必ず内側を上にして固定するという点。これは「中身のない死んだ貝であることがわかるため、捕食者に狙われにくくなる」という説もあります。
また、細長い巻き貝をくっつけるときは、尖った先端を接着するという、こだわりよう。見た目だけでなく、バランスや機能性も考えているのかもしれません。
よく見ると、バクのような長い吻とつぶらな瞳がカワイイ。ここは私の推しポイントです。
クマサカガイは、急斜面やくぼ地など、小石や貝殻がたまりやすい場所を好んで暮らしているようです。貝殻を付着させるときは、長い吻を使って石や貝の表面をていねいに掃除してから、しっかりと接着するそうです。
完全にくっつくまでには時間がかかるため、その間はじっと動かずに待機するのだとか。
――深海の静けさのなかで、そんな細やかな作業をしている姿を想像するだけで、なんだか愛おしく感じられてきます。
【飼育研究部 森滝丈也】