熊野灘の水深200〜500mあたりに生息するアカモントゲオキヤドカリ。このヤドカリは、可愛らしい桃色のイソギンチャク(未記載種)と興味深い共生関係を結んでいます。
先日、朝の見回り時にふと見ると、水槽内で飼育していた個体が脱皮をしていました。
驚いたことに、脱ぎ捨てた貝殻からかなり離れた場所で、ハダカのまま、まるで物思いにふけるように(笑)じっと佇んでいました。
貝殻を捨てたのか?イソギンチャクとの関係もこれまでなのか…?そう思いつつ、試しに貝殻の近くに戻してみると…
何事もなかったかのように、すっと元の貝殻に戻っていきました。じゃ、ハダカで佇んでいたのって一体…
でも、今回のこの一連の行動から、アカモントゲオキヤドカリが桃色のイソギンチャクに強いこだわりを持っていることがうかがえました。
イソギンチャクが付着していることで、天敵から身を守るなどの利点があるとも考えられます。
見た目の可愛らしさとは裏腹に、深海ならではの厳しい環境で生き抜くための、したたかな共生戦略が垣間見えた朝の見回りの時間でした。
【飼育研究部 森滝丈也】