ウオノエ類は魚の口やエラ、体表に寄生する甲殻類(ダイオウグソクムシなどと同じ等脚目)で、日本近海からは36種類が報告されています。それぞれ寄生する相手(魚種)が決まっています。
メスのウオノエは繁殖期に腹部にある薄い板状の覆卵葉(ふくらんよう)が重なってできた育房(いくぼう)内で卵を保護し、ここで孵化した幼生は、しばらくすると、新しい宿主を探しに一斉に水中に泳ぎ出します。
小さな幼生が広い海の中で決まった相手(魚種)に巡り合える確率はどれぐらいでしょうか?どの資料を見ても「しばらく泳ぎ続ける」みたいな表現ばかり。どうやら詳しいことはわかっていないようです。
今、予備水槽で、ウオノエの一種トリカジカエラモグリ Elthusa moritakii のマンカ幼生を飼育しています。これは先月の12日に親から泳ぎ出たもの(ただし、本種は入手が難しい深海魚のトリカジカに寄生するので、残念ながら水槽内で寄生させることは叶いません)。
この中の1個体が既に50日間泳ぎ続けています。
この個体だけが例外的にタフなのか、何とも言えませんが、マンカ幼生の遊泳期間の一例として貴重なデータになりそうです。
幼生は何も食べずに泳ぎ続けるので、胸部の中腸線(ブドウの房状に見える部分)の痩せが目立ってきました。