三重県の尾鷲市に深層水を取水する海洋深層水取水施設アクアステーションという施設があります。
深層水の取水管はこの先はるか沖合12.5km先まで伸びていて、取水管の先端(取水口)があるのは水深415mの海底。
時々、この取水口の近くを泳ぐ魚などが深層水と一緒に吸い込まれてしまうことがあります。
珍しそうな生物であれば水族館に連絡が入るので、受け取りに行きます。
今朝も連絡がありました。
生きたタコがストレーナーに入ったそうです。
さっそく受け取りに行くと、深海性のタコ・ツノモチダコでした。
本種は沖合底引き網でよく捕獲される(食用)タコですが、今回のように海水と一緒に12.5kmのパイプを遡って来たかと思うと「ご苦労様」の一言です。
確かに、見るとかなりくたびれています。
自分で食べてしまったのか、右側2本の腕が無くなっています…
さて、今回のツノモチダコは特に珍しい種類ではありませんでしたが、時には非常にレアな生物が採集されることもあります。
例えば、これは2014年の年末に吸い込まれてやって来たアカドンコ(魚)のヒレに寄生していた等脚類(水槽搬入後に寄生に気づきました)
研究者の方に調べてもらった結果、何と日本で初めての採集だということが明らかになりました!
当然まだ和名が付けられていなかったので、昨年出た論文で「スジオスナホリムシダマシ」の和名が提唱されました。
こういう「大当たり」を引き当てるとやはり興奮しますね。
次のアクアステーションからの連絡が楽しみです。
【飼育研究部 森滝丈也】