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鳥羽水族館 飼育日記 鳥羽水族館 飼育日記

タコとニハイチュウ

今シーズンは1ヶ月に1回のペースで熊野灘の沖合底引き網漁船に乗せてもらい生物採集を行っています。

これは展示生物の入手はもちろんですが、熊野灘の生物調査としての意味もあります。

 

種名の分からない生きものは研究者の力をお借りしながら少しずつ明らかにしています。

そんな中で特に力を入れているひとつがニハイチュウの調査。

毎月ニハイチュウ研究者さんが来館してニハイチュウをサンプリングしています。

 

このブログでも何度か紹介していますが、ニハイチュウは、タコやコウイカ類の腎嚢に寄生する体長数百μm〜数mmの小さな生物。

多細胞生物でありながら体を構成する細胞は40個以下、器官の分化もなく体のつくりははとてもシンプル。

 

興味深いのは、この仲間は種特異性を持ち、寄主(タコ・コウイカ類)ごとに異なる種類が見つかること。

タコの腎嚢中で生活していますが、特に悪さをするわけでもないようで、寄生というよりも共生関係にあるようです。

 

研究者が少なく、また深場に生息するタコは一般的に入手が困難なため、沖合底引きでたくさん捕獲できるツノモチダコからですら4種もの新種ニハイチュウが見つかりました。

もちろん、採集例が少ないレアなタコからも見慣れないニハイチュウが見つかります。

 

例えばこのタコ。

腕が長いエレガントなタコですが、去年2月に1個体が見つかっただけ。

その時、このタコから私が確認したニハイチュウはこんな1種のみ。

もう一度、採集できないかと思っていたら…前回の乗船(去年と同じ2月!)で、やっぱり1個体だけが採集できました。

研究者の方にニハイチュウをサンプリングしてもらい、タコの種名を調べてもらったところ…なんと、どうやら新種のタコのようです。

もちろんこのタコのニハイチュウも新種で、そのうちの1種は珍しい属だとか。

 

ところが、ニハイチュウはどんな種類のタコから見つかったか明らかにしなければいけないらしく、そうなるとまずタコの種名を決定しなければいけません。

ところが、タコの標本数が少なすぎて現段階では無理…

成熟した雌雄が必要だそうです。

 

あぁ、エレガントなタコちゃん、また採集できないかなぁ…と思っていたら!

 

昨日、地元の業者さんから深海のイソギンチャクについて問い合わせがあったのです。

送られてきた画像を何気なく見ると、隅の方にそれらしいタコが写っているじゃないですか!

少し興奮しつつ、イソギンチャクと一緒に注文しましたよ!

そして本日入館~

へんな生きもの研究所で展示しています。

まだまだ個体数は必要なので、採集は継続しますよ。

 

ちなみに…問い合わせのあったイソギンチャクの方もかなりのレア種のようです。こちらは次回に紹介します。

【飼育研究部 森滝丈也】

 

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