伊勢志摩の海ゾーンにある、とある水槽…この中のトゲモミジガイ(ヒトデ)、何故か腕のちぎれた個体が目立って多くいます。他の水槽ではほとんど見かけないのに。
再生力の強いヒトデなので、ちぎれても、まぁ大丈夫なんですが、少し奇妙です。ちなみにこんな感じ。
何かに襲われ、食いちぎられたのでしょうか?
…あの、私、容疑者に心当たりがあります。それはヤツデスナヒトデ。大型の多腕のヒトデです。
昼間は砂の中に身を隠してほとんど見ることはできませんが、夜中に動き回る姿を見かけます。あ、このヒトデです。体が大きく、いかにも悪そうなツラ構え(…てどこが顔?)
確かに、このヒトデは自然界ではブンブクチャガマ類(ウニ)を好んで食べる、そんな目撃証言が得られていますよ。
それなら同じ棘皮動物のトゲモミジガイを襲ってもおかしくはないはず…でも確証はないのです。
襲う瞬間を誰も見たことがありません。見つかるのは腕のないトゲモミジガイの状況証拠ばかり…。限りなくヤツデスナヒトデはクロですけどね。
それが、先日の朝。見回り中のこと…
普段は砂の中に隠れているヤツデスナヒトデが急に砂の中からあらわれて、右側に移動しはじめたところに遭遇しました。ヤツデスナヒトデはヒトデ界ではかなりの俊足ランナー。滑るように砂の上を右に移動していきます。
右にいたのはトゲモミジガイ。
ヤツデスナヒトデからは40㎝ほど離れていて、普段と同じようにゆっくりと動いていました。
すると、ヤツデスナヒトデ(以下ヤツデスナ)の接近に気付かないのか、トゲモミジは左の方へ移動していくじゃありませんか!
あぁ!あぶない(かも)!でも、どうなるのか楽しみ!
トゲモミジはのんきにヤツデスナに近づいていきます。いや、それ以上にヤツデスナの接近するスピードがハンパない。
そしてヤツデスナの腕の先端にトゲモミジが触れた瞬間…
トゲモミジはいきなり方向転換!逆方向に猛スピードで逃げはじめたのです!
明らかにそれは回避行動。そりゃ尋常じゃないスピードで逃げる逃げる。
この行動が面白かったので、そばにいた同期入社海獣担当女性のHさんを呼んで、水槽前で一部始終をアフレコしながら解説しましたよ。
あぁ、でもこの行動でかなり確信持ちました。
やっぱり、トゲモミジガイを襲っているのは…
「奴ですな!」
その後、諦めたのか、ヤツデスナヒトデは再び砂の中に静かに沈んでいきました。またの機会を狙うかのように…