先日書き込んだイッカクダコのペニスは2本ある?問題の続き。
今回はついに最終章(笑)…どうやら真相にたどりついたようです。
実は、今シーズンは熊野灘の漸深帯タコの寄生虫ニハイチュウについて大学の研究者と調べているのですが、その方にイッカクダコのペニスについてたずねたところ…真相に繋がるヒントをいただいたのです。
そして導かれた結論は…どうやらあの2本のペニス(と思われたもの)は輸卵管のようだということ(矢印の白い部分は卵管球)
つまり、あの個体はメスだったのですね。
それも未成熟な個体で生殖巣が発達していなかったためにオスと見間違えてしまったようです。
さらに勘違いした一番大きな理由は、2本の輸卵管に精莢(精子の入ったカプセル)が入っていたこと。
これがあったためにペニスだとすっかり思い込んでしまっていました。
少し調べてみると、北海道のミズダコの繁殖生態について書かれた報告書を見つけました。
この報告によれば、ミズダコの場合、メスはオスよりも遅れて成熟するそうです。
つまりメスは成熟が進んでいない状態で交接をおこなって精莢をオスから受け取ることになります(受け取った精莢はメスの輸卵管の中で溶け、精子が卵管球に貯蔵される)
そして交接後すると、メスは急激に成熟して半年ほどすると受精、産卵に至る…とか。
どうやらイッカクダコもこれと同じパターンのようです。
ミズダコであれば秋が交接シーズンのようですが、熊野灘のイッカクダコは春に成熟オスと未成熟メス(精莢持ち)が一緒に捕獲されるので、どうやらこの時期が交接シーズンのようです。
本日もイッカクダコ♂が死亡したため(深海性のタコは飼育が難しい…)解剖しました。
この個体は交接腕(左第3腕)の先端の舌状片がしっかり残っていたので、オスなのは明らか。
今回の一件で、熊野灘のイッカクダコの生態の一部が垣間見えました。
さらに調査をすれば色々なことがわかってくるでしょう。
【飼育研究部 森滝丈也】