スイクチムシは見かけからは想像つかないですが、実はゴカイなど同じ多毛類(環形動物)の一員。
昨年は熊野灘の沖合底引き網で採集したヒトデ3種(ウデナガゴカクヒトデ、ヒメヒトデの一種、カンムリヒトデ)の体内から未記載種と思われるAsteriomyzostomum属スイクチムシを相次いで見つけました。
それぞれの種類によって寄生する部位は決まっているようで、例えばこのカンムリヒトデで見つかるスイクチムシなら、ヒトデの胃の中から見つかります。口から見えるオレンジ色のものがスイクチムシ(矢印)
取り出して腹側から見るとこんな姿。とてもゴカイの仲間だとは思えません。
他のヒトデのスイクチムシも幽門盲嚢や直腸嚢などの消化器官から見つかるので、ヒトデのスイクチムシは消化されない仕組みがあるのでしょうね。
さて、このカンムリヒトデのスイクチムシならヒトデの口からその姿をかろうじて見ることができます。
そこで、展示できないかと毎回、挑戦しているのですが…
肝心のカンムリヒトデ自体が腕を自切しやすく、なかなか寄生状態の展示に成功していません。
今回も連れ帰ったら既に自切していました。
ところが、その後思わぬ展開に…
翌日、同じ水槽にいたウデナガゴカクヒトデに丸飲みされてしまったのです!
その後一日かけて消化されてしまいました。
そして、その日の夕方、驚くべきものを見たのです…!
カンムリヒトデを襲ったウデナガゴカクヒトデの口から何かが見えているじゃないですか!
どひゃ~
これはカンムリヒトデのスイクチムシじゃないですか!
一緒に食べられたはずが、ちゃっかりウデナガゴカクヒトデの口の中で生存しているとは…
本来の寄主ではないのに、こういうことがあるとは…驚きです。
今後、このスイクチムシはどうなってしまうのか?
このままウデナガゴカクヒトデにとどまり続けるのか、排除されてしまうのか、行く末が気になるところです。
【飼育研究部 森滝丈也】