現在、水族館でご覧戴ける水族館生まれのオウムガイは№162の1匹だけ(以下P162)ですが、順調に成長しています。
本日で孵化後115日目を迎えました(特にこの数字に意味はありません)
実は、オウムガイは孵化後の生残率がかなり低く、これまで孵化後半年で実に92%以上が死亡しています。
もちろん野生ではもっと生残率が高いはずですが、飼育下では長期飼育はかなり難しいのが現状です。
そんな中、順調に成長し続けているP162の行動が、最近目に見えて変化してきました。
水温24℃の孵化専用水槽から、孵化後早々に成体と同じ水温18℃に引っ越し(成体の水槽の中に吊るした小型水槽で飼育)してからずっと水面近くで浮かんでいましたが、最近になって、自力で沈降できるようになってきたのです。
軟体部が成長して中性浮力がとりやすくなってきたようです。
餌の匂いに誘われて、自力で水槽の底まで沈降して懸命に餌を探す姿はとてもかわいい。
まだまだ水面近くでプカプカしている時間は長いですが、時々、水槽の中層あたりに付着して一休みしてるのを見かける機会も増えてきました。
徐々に自在に浮いたり沈んだりできるようになって、世界が上下に少しずつ広がってきたよう。
よちよち歩きをしはじめたヒトの赤ちゃんの、あのおぼつかない動きにも似て、P162の成長する姿は微笑ましく思えます。
餌を与える時も、これまでのように触手に直接つかませるのではなく、わざと水槽の底に沈めて自力で探させてやればP162の沈降/浮上の訓練になるんじゃないかと、考えています。
【飼育研究部 森滝丈也】