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鳥羽水族館 飼育日記 鳥羽水族館 飼育日記

オウムガイ№149(P149)

すでにHP等でお知らせしていますが、オウムガイ№149(P149)が一昨日 死亡しました。

P149は2009年7月10日鳥羽水族館で孵化し、オウムガイ類の孵化個体として世界最長飼育記録を更新中でしたが、残念ながら死亡により記録は2216日(2215日齢)でストップしてしまいました。

ちなみに…PはNautilus pompiliusの略号。当館ではオオベソオウムガイも孵化しているので区別するためにこう呼んでいます(オオベソ孵化個体№62ならM62)

 

死亡する前日、私は宿直勤務でした。

最近、ずっと調子が良かったP149ですが、前日の夜は少し様子が違っていました。

産卵の前兆行動のようにも見えたので、久しぶりの産卵に期待しつつ翌朝を迎えましたが、産卵はしていませんでした。

 

ひとまず記録写真を残しておきましたが、まさかこれが最後の写真になるとは…

昼過ぎに宿直を終えて退社し、家族を連れてナイトアクアリウムの様子を見に再び水族館へ来たのが夜7時。

そこで、P149の死亡を確認したのです。その日の朝に生存を確認していただけに驚きました。

ところで、オウムガイのどこを見て死亡を確認するのか?とよく聞かれますが、今回は頭巾が下がり殻の黒い部分が見えていたので異変に気が付きました。

 

P149の体重は686gで殻径は131mmでした。

もともと水槽内繁殖個体は小型化する傾向にありますが(同じ水槽の野生由来個体は殻径16-20cmほどあります)実はオウムガイは生息地によって体サイズに変異があることが知られています。

例えばフィリピンのSulu SeaやオーストラリアのOsprey Reef の個体群であれば、オスでも殻径130 mm程度と P149と同サイズ(か、むしろ小さいぐらい)

一方、オーストラリアの別の海域では殻径268mmに達する最大の個体群もいるようです。

 

このように体サイズは生息環境に大きく左右されるようで、このことは水族館の繁殖個体が小型化する原因も含めて興味があります。

ひとまず解剖をしてみましたが死因の特定には至りませんでした。

が、腎嚢周辺の状態が気になるので、あらためて調べてみるつもりです。

野生のオウムガイの場合、性成熟まで15-17年、寿命は20年以上であるとの研究報告があります。

ところが、水槽内繁殖個体はわずか2-3年ほどで性成熟することがわかっています。おそらく何らかの理由で成長スピードが速くなり、寿命も早くなってしまうようです。

P149は孵化後3年1ヶ月で産卵を開始し、丸6年と少し生存したわけですから、ほぼ寿命だったと判断できるでしょう。老成個体であったことは殻の形状からも推察できます。

いずれにしても、もっと細かく記録を残せばよかったと今更ながら少し悔やんでいます。記録を残していたつもりだったけれど、まだまだ足りなかったな、と。

生存時にしか取れないデータは、生きているうちに細かく残していかなければね、どんな生きものでも。

 

それでも、産卵、孵化から最後まで、オウムガイの一生(飼育環境ですが)に付き合えたことに感謝。

この経験を次のオウムガイ飼育に活かしていかねばと改めて決意させてもらいました。

ありがとう。

【飼育研究部 森滝丈也】

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