またまたノトリア(Nothria)ネタ。
ノトリアは貝殻などを付着させた筒状の巣をつくる多毛類(ゴカイの仲間)で、世界で40種類ほどが知られています。
先月、熊野灘 水深300mで見つけた枯れ葉を使って巣をつくるノトリアが未記載種である可能性が高いことが明らかになりました(仮称・葉っぱノトリア)。
現在、へんな生きもの研究所で飼育しながら生態観察を続けています。
ところで、この葉っぱノトリアも飼育している冷水系水槽(設定水温8.0℃)の飼育生物が最近、全体的に調子が良いようです。
原因のひとつとして私が考えているのが、水槽内で繁殖するバクテリアが良い餌になっているからではないか?ということ。
実際、水槽配管の内側ではバクテリアが繁殖しているようで、バイオフィルムが形成されています(水垢みたいなもの)
時々、配管の水の流れを強めてやると、配管内壁からはがれたバイオフィルムが水槽の中を舞い、そしてそのまま沈殿します。
こんなバイオフィルムが無脊椎動物の餌として有用であるということは比較的よく知られています。
それに倣ってこの水槽でも沈殿したバイオフィルムはそのまま放置していますが、どうやら本当に餌になっているようです(少なくとも葉っぱノトリアは食べているようです)
今日、以前から気になっていた葉っぱノトリアのフンを回収して観察してみました。
枯葉由来だと思われる茶色のフンと一緒にクリーム色のフンも確認できました。
このクリーム色のものがどうやらバイオフィルム由来のようです(ちなみに餌として与えているのはバイオフィルムと枯葉だけ)
底性の多毛類(ゴカイの仲間)の多くは堆積物を餌にしているといると考えられているようですが、こういったバイオフィルムや枯葉も餌になっているようですね。
葉っぱノトリアの生態についてはまだまだ分からない事ばかりですが、今、こういった小さな情報が少しずつ積み重なって生態に関する知見が少しずつ増えています。
普段は深海にいて見ることができない「葉っぱノトリア」
飼育を通じて生態が明らかにできれば、と考えています。
【飼育研究部 森滝丈也】
追記:後日、この枯葉を使って営巣する多毛類は、Nothria属ではなく、クシエライソメ Anchinothria cirrobtanchiata であることが判明しました。2017.6.12