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鳥羽水族館 飼育日記 鳥羽水族館 飼育日記

オウムガイ P156が孵化しました

今朝の見回り中、孵化した小さなオウムガイを見つけました。

少し前から孵化を楽しみにしていただけに嬉しさもひとしお。

実は、鳥羽では1995年に初めて孵化に成功して以来、これまでに155個体が孵化していましたが最近はサッパリでした…。今回孵化したP156は2009年10月20日以来、約4年ぶりのチビ・オウムガイになります。

孵化しなくなった理由は色々でしょうが、大きな理由は私のモチベーションが下がったってしまったからかと…

 

ある程度まとまった数の孵化に成功して全国会議で2度発表し、最終的に最大の目標だった「古賀賞」を受賞したことで、どこか気持ちが燃え尽きてしまったような…

ちょうど同じ時期には館内のリニューアル工事が重なっていましたし、業務が多忙で精神的に余裕がなかったのも大きな理由かもしれません。

 

繁殖の成功や何か未知の事例に気付いたりするのは、精神的に余裕があるときに限られてくる気がするんですよね、経験的に。

↑今回孵化したP156

 

そんなスランプのどん底にいた去年の12月。

以前にも一緒に研究をした研究者からあらたな研究の申し出がありました。

研究には、孵化する前の生きたオウムガイの胚が必要でしたが、ここ数年は孵化することなく全てが発生途中で死んでいたので、どうせ死んでしまうのなら研究に役立てたほうが良いと判断して、7月から12月の間に産卵した全ての卵を提供しました。

また、試料として提供するのと同時に、全ての胚の状態を観察することで発生途中で死んでしまう理由を研究者と一緒に探ろうとも考えました。

 

全てを精査した結果、 3ヶ月目以降でほとんどの胚が死んでしまい、7ヶ月目になるとわずかに生き残っていた胚もすべて死んでいたことがわかりました(オウムガイの孵化には8~10ヶ月かかります)

原因としては、卵を展示水槽から孵化専用水槽へ移動する際の急激な温度変化、あるいは溶存酸素量の低下で初期の胚に奇形が起こって後期胚の大量死滅を引き起こしている可能性が考えられました。

 

そこで、卵の 管理方法の変更点として、移動の際の温度変化を少なくするために孵化専用水槽の水温は26℃から23℃に下げ、展示水槽で回収した卵はある程度発生が進んで(2週間ほど)から孵化専用水槽へ移動するようにしてみました。

また、水槽内にわいた、卵黄を食べるおそれのあるヨコエビは可能な限り駆除しました。

 

これらの工夫が功を奏したのか、今回、実に4年ぶりにオウムガイが孵化したのです。

これで、また新たな一歩が踏み出せそうです。

 

研究者など外部の人の存在は、私のマンネリ化した気持ちに喝を入れてくれます。

 

オウムガイだけに限らず、モチベーションを高く保つためにも積極的に外部の研究者などと関わっていくことが大切ですね。

それが水族館の展示に還元されれば、なお良いことです。

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