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鳥羽水族館 飼育日記 鳥羽水族館 飼育日記

食べない理由を考えてみる

ダイオウグソクムシ№1は、なぜ拒食状態(少なくとも与えた餌は食べていない)が続いているのか?

理由はよくわかりませんが、今回は鳥羽での飼育環境などを紹介しつつ拒食の理由を探りたいと思います。

 

ダイオウグソクムシの飼育は90㎝水槽(900×450×450mm)で、他の水槽とは完全に独立した閉鎖循環系です。

使用海水は人工海水で、水槽内部には珪砂を敷いているだけで他に何も入れていない(初期は岩を入れていたが後に撤去)ので、餌になる有機物は混入しないと思われます。

 

水温は年間通じて7℃に設定。

これはダイオウグソクムシがメキシコ湾の水深800mで捕獲されたとの情報から設定したものですが、最近になって、ダイオウグソクムシの8割以上は水深365~730mで捕獲されると記された文献を知り、これを根拠に、もう少し高めでも良いのかもと昨年末から水温を10℃に変更してみました。

 

水槽に加圧はしていません(他の園館さんでも加圧飼育はしていません)。

 

水槽には1個体が死ねば1個体を追加するかたちで最大2個体を飼育しています。

これまでに飼育したのは全部で5個体。

№2(1年8ヶ月生存)と、№3(3週間生存)は飼育期間中に餌を食べませんでしたが、№1(今、絶食中の個体)と№4(2年6ヶ月生存)、№5(生存中)は過去に餌を食べています。

 

これは在りし日の№4。入館後9ヶ月目にやっと摂餌しました。食べたのは鮮度の良いマアジ。

そして、また食べなくなり…次に食べたのは1年4ヶ月後(下画像)。食べたのはやはり新鮮なマアジ。

どうやら、ダイオウグソクムシの摂餌間隔はこんな感じのようです。

 

野生のダイオウグソクムシの胃内容物を調べると、ほとんどが魚で残りはイカだそうです。

確かに、№4が入館してしばらくして水槽の中でこんなものが見つかったことがありました。

これです↓

イカの吸盤のリングイカの歯舌これらはおそらく排泄物の中に入っていたものと思われます。

それまで、アジしか与えていなかったので、それじゃイカだったら喜んで食べるのかと何度か試してはみましたが、予想に反して何故か飼育下ではこれまでに食べたことはありません。

 

魚肉も色々なものを試しました。

ホッケ、サンマ、ニシン、シシャモ、ブリ…

№5はサンマとブリを食べているので、魚の種類による選り好みはない感じがしています。

でも、やはりダイオウグソクムシと言えば腐敗したものを食べる印象が強いですよね。

実は、腐らせた魚も与えたことがあるのです。年末と今日、拒食中の№1に与えてみました。腐らせたニシンです。

ところが反応はむしろ新鮮な魚の方が良いような…全く食べません。

腐ったニシンも食べない本日の№1↓ (水槽内が明るく見えますが実際はもっと暗い)

ところで、文献によると、ダイオウグソクムシの摂餌行動には季節変動があるようです。

夏には胃が空っぽの個体が増え、冬には逆に満腹の個体が多いそうです。

深海なので、季節による水温変化はほとんど無いようですが、季節の変化を感じているようです。

…と、ここで面白い符合に気付きました。

当館でこれまでに摂餌した個体(№1、4、5)が食べたのも10月から2月の冬の5ヶ月間だけなんですよねぇ~(偶然?)

そして、№2、3,4が死んだ月は5、6、7月…(すべて夏だけど偶然?)

 

…と、まぁ結局、№1の拒食している理由ははっきりしませんが、以上のことからこの冬が勝負のような気がしています(結構、真剣に)

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