熊野灘の沖合底引き網で、水深200mあたりでヨコヤホンヤドカリの体に共生するヨコエビの仲間が採集されます(体長5mm)
これまでに何度か飼育日記で紹介していますが、このヨコエビはイシクヨコエビ科 Isaea属で種類は不明。現在調査中です。
Isaeaは既知種が 4種しかいない小さな属で、他の大型甲殻類と共生する習性を持つことが知られています。日本沿岸から採集報告はありません。
4種のうち3種は大西洋に分布し、1種だけが北太平洋から報告されています(Isaea concinna)
北太平洋から知られるIsaea concinnaの分布域は日本海~ベーリング海の水深17~89m(ロシア沿岸)で、カイメンを背負ったヤドカリに共生しているそうです。
記載論文を読んでみると、このロシアIsaeaは熊野灘Isaeaとは明らかに体色が違います。
ロシアの体色はライラック色(薄紫?)で目はダークバイオレット(濃い紫?)ですが、熊野灘の方は黄色の横縞。
目は光の反射で銀色に光りますが、黒っぽいですし。
そこで、さらに相違点を確認しようと、先日標本を解剖して観察してみました。
結果、はっきりと異なる特徴を複数確認しました。
写真がきれいに撮れたので、今回、その特徴の一つを紹介します(笑)
ロシアのIsaeaは第5-7番目の胸肢のつけねが楕円形だと記述されているのですが…熊野灘のIsaeaは斧型です。
斧型という表現が適当なのか、わかりませんが。(矢印の部分・画像は第5胸肢)
ちなみに、Isaeaの仲間は全て脚の先が亜鋏状になっています。
【飼育研究部 森滝丈也】