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鳥羽水族館 飼育日記 鳥羽水族館 飼育日記

シラヒゲウニとシーグラス

記録を残しておかなければいけなかったのですが、うっかり忘れていました。

エントランスホール入ってすぐのサンゴ水槽で飼育していたシラヒゲウニ。

水槽の岩陰にいる姿をたまに見かけるのが楽しみだった、お気に入りのウニでしたが、今月3日に死亡を確認しました。

 

実はこれまでにも何度か飼育日記で紹介してきましたが、このウニは三重県で採集され、飼育歴は早いものですでに9年半(2007年12月入館)

一説では、シラヒゲウニの寿命は2年程とされているので、十分に長生きしてくれたものだと思います。

ところで、当館で飼育していたシラヒゲウニはずっとこの1個体だけだったのですが、実は今年、同じ三重県で採集された新入りが入館していました。

紹介しようと思いつつ、こちらもなかなかタイミングが合いませんでした。

 

シラヒゲウニの体色は白と赤褐色のタイプがあって、今回の新入りは赤褐色タイプ。

この個体はサンゴ水槽ではなく、現在、ジュゴンの海ゾーンにあるシーグラス水槽で展示しています。

シーグラス水槽の海草はリュウキュウスガモですが、このリュウキュウスガモなどで構成される熱帯の海草藻場は生産性が高く、多様な生物の宝庫です。

まぁ言ってみれば、生きものの「ゆりかご」みたいな場所ですが、これを住みかとしてだけでなく、餌にも利用する生物となると、これが意外と少数なのです。たとえば、哺乳類だったらジュゴンやマナティ、あとはアオウミガメと一部の魚類ぐらい。

さらに海産無脊椎動物になるともっと種類が少なく、主なのはこのシラヒゲウニぐらいだと言われています。

シーグラス(海草類)は、陸に進出した高等植物が再び海に戻ったグループなので、陸上で獲得した丈夫な細胞壁を持ちます。そのため、草体が硬くて利用しにくいのが理由のようです。

その上、シーグラスが出現したのは 海産無脊椎動物の歴史に比べると、比較的最近のこと(と言っても白亜紀ですが)なので、海産無脊椎動物にはあまり利用されなかったようです(食べ慣れない新食材というわけですね)。

その中で、なぜかシラヒゲウニだけが例外的にシーグラスを餌にできるように適応したわけですが( 理由は知りませんけど)なんだかパイオニアのようで格好良いですね。

そんなわけで、私の中では、海草藻場生態系と言えば「ジュゴンとシラヒゲウニ」だったので、この水槽で展示しているわけです(笑)

 

シーグラスを餌にしているからと言うわけではないと思いますが…赤褐色タイプのシラヒゲウニの管足は緑色です。

【飼育研究部 森滝丈也】

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