先日紹介した、ゴカイの仲間Nothria属(ノトリア)の続きです。
ノトリアの仲間は小さな貝殻などで巣を形成し、それを引きずるように生活しています。
熊野灘の水深300mで採集したノトリアの巣(画像)を研究者に見てもらったところ、日本の5種の既知種、および1種の未記載種、そのどの巣形質とも一致しない、との返事をもらいました。…ここまでが前回の話。
結局、あれは本体がいなかったので正体は不明のままでしたが…
先日の底引き網採集で30個体ほど採集できました!これで正体が判明できるかも。
また、別のノトリアも採集できました。
こちらの巣の材料は、驚いたことに 何と枯葉や小枝! 水深300mで、ですよ。
聞けば、ノトリアでこのような枯れ葉や小枝で巣を作る種類は知られていないそうです。
熊野灘では底引き網に沈木がよく掛かるし、それを餌にする生物(“鏡餅ウニ”ことPrionechinus forbesianusなど)も採集できます。
おそらく山からの供給物をもとにした、ひとつの生態系ができあがっているようです。
山と海のつながりが感じられ、熊野灘にますます興味がわいてきました。
【飼育研究部 森滝丈也】
追記:後日、この枯葉を使って営巣する多毛類は、Nothria属ではなく、クシエライソメ Anchinothria cirrobtanchiata であることが判明しました。2017.6.12