ヒメキンカライソギンチャクは、ジンゴロウヤドカリが背負う巻貝の上に付着し、その貝殻を自らの体で覆いながら“増築”していくという、非常に珍しい生態を持ちます。
2022年に Stylobates calciferの学名で新種記載されましたが、学名の“カルシファー”は、イソギンチャクがヤドカリの貝殻をまるで“動く城”のように改造する姿から、『ハウルの動く城』に登場する火の悪魔にちなみます。
確かにカルシファーぽいですね。
さて。
先月採集したジンゴロウはヒメキンカラを背負っていませんでした(こういう例はときどきあります)。
そこで、先日、イソギンチャク付きヤドカリが複数確保できたので試しに同居させてみました。
大柄なイソギンチャク無し個体が小柄な個体の貝殻からイソギンチャクだけを剥がして奪うのでは?と予想したのですが、今朝見ると、なんと小型個体の貝殻を丸ごと奪って“引っ越し”していました。奪った貝殻は明らかに小さいはずですが、お構いなし。
一方、宿から追い出された格好のヤドカリは、大きすぎる貝殻の中でじっとしていました。
さすがにこの大きさの貝だと不釣り合いなので、このコは予備水槽にあるヒメキンカラ付き貝殻に入居させます。
やはり、ジンゴロウヤドカリにとってヒメキンカライソギンチャクは奪ってまで手に入れたいアイテムのようです。
【飼育研究部 森滝丈也】