リプケアの近況です。
2015年の5月にへんな生きもの研究所の水槽内で見つかった珍種クラゲ・リプケア(Lipkea sp.)
リプケアは十文字クラゲの仲間で、泳ぐことはなく岩に付着しています。
この仲間の発見例は少なく、国内では2012年に千葉の博物館で見つかったのが初記録。これまでに千葉と鳥羽でしか見つかっていません。
生態の多くは謎に包まれています。
千葉県の博物館でリプケアの無性生殖による増殖が報告されていますが、伸長したクラゲの基部が切り離されると肉団子状 になり、それがクラゲや中間型、ポリプの3 つの形態に変化するそうです。
このような無性生殖は十文字クラゲの仲間ではこのリプケアで初めて確認されたそうで、なかなか興味深い習性だと思っていたのですが、鳥羽では観察されていませんでした。
それが昨年末から年明けにかけて無性生殖の過程らしい変化が観察できました(これは以前の飼育日記でお伝えしました)
12/1 に柄部の形状変化が明らかになると1週間ほどでどんどん形が変化…そして12/25のクリスマスから年明けにかけてさらに伸長。
想像以上に急激な変化でした…
ところが、1月に入ると停滞気味に。
2月に入っても長く伸びた柄はちぎれず、糸のようにつながったまま。これはいつになったらちぎれるのか?
今朝見ると、相変わらず伸びた柄部はちぎれないままで、あらたに別の位置の柄部が伸びはじめてきました。
…あれ?
と言うか、すでにここに小さなクラゲが2つあるじゃないですか!(矢印)
実は、以前この場所には大きなリプケアが付着していました。
それが去年の秋頃に姿を消していたので、すっかり消滅したものだと思っていたのですが…
どうやら一部が残っていてそれが再生したようです。あるいは萎縮していただけかも。
それでも、となりの個体は無性生殖で増えた個体かも知れません。
過去の画像を見返してみると、去年のクリスマスの時点で既に小さなクラゲの姿が確認できますね(矢印)
これは無性生殖の前段階の「肉団子」かもしれません。
どうやら知らず知らずのうちに水槽中でリプケアは増えているようです。
現在、国内の水族館でリプケアの姿を見ることができるのは鳥羽水族館だけのようです。
興味のある方はぜひ!
【飼育研究部 森滝丈也】