昨日、飼育日記にシダムシの話題を書き込んだ直後。
沖合底曳き網で採集したヒメヒトデ属の一種(Henricia sp.)の異変に気がつきました。
もしかしたら…シダムシがお尻の穴からコンニチワしているのか!?
…な~んて妄想です(笑)
実際はこのヒトデからはシダムシは見つかっていないですし、こんなふうにコンニチワする習性なんて知られていませんから。
で、今朝。
肛門からの突出物はさらに大きくなっていました。
ヒトデも体が崩れ始めていました。…どうやらこれは消化器官(幽門盲嚢)、つまり脱腸ですね。
ヒトデの死亡を確認後、とりあえずシダムシ探しのため解剖。
…やはりシダムシは見つかりません。
んがっ!ちょっと待て!スイクチムシがいるじゃないですか!(矢印)
どひゃぁ!
スイクチムシ…それは主にウミシダで見られるパラサイト(寄生生物)
一般にはあまりなじみがない生物かもしれません。
見かけからは想像つきませんが、実はゴカイやミミズ、ヒルなどと同じ環形動物の一員です。
170種ほどいるほとんどがウミユリ類(ウミシダ類)に外部寄生していますが、ごく一部(12種ほど)がヒトデ、クモヒトデ類から報告されているそうです。
日本近海からは漸深帯に生息するヤマトホシヒトデの内臓(幽門盲嚢)に寄生するスイクチムシの一種(未記載種)が知られています。
私も最近、水深200m~で採集したウデナガゴカクヒトデの幽門盲嚢からスイクチムシを見つけてました(これも知られていない種だと思われます)
そんな珍しい、ヒトデに内部寄生するスイクチムシ。
少なくとも日本近海のヒメヒトデの仲間からは初記録だと思われます。
もしかしたら熊野灘から第3種類目の発見!(になるかも)
ムニムニ動くのでカバーガラスで軽く押さえてみます。
平らな体の両側に5対の「いぼ足」があり、その先端には剛毛が。
黒く小さく見えるのが、いぼ足の剛毛。
拡大。
いぼ足先端の剛毛でヒトデの内臓(幽門盲嚢)につかまるようです。
今はスイクチムシまで手を広げるわけにはいかないのですが、貴重な標本として取っておきます!
【飼育研究部 森滝丈也】