オウムガイ類のメスは、卵を岩などに付着させるときに使う特殊な腕のような器官(突起)を口の下側に持っています。
これは性成熟に伴って発達するので、若い個体ではほとんど目立ちません。産卵可能年齢に達しても産卵時にだけ伸びるものなので、普段はほとんど目にすることはありません。
突起は肉質のヘラ状で、二股になった先端には12~14本ずつ、短い腕(触手)が生えています。
生殖口から産み出された卵をこの突起に持ち替えて、本当に手のひらで何かを形作るように器用にコネコネしながら卵を岩陰や岩の隙間に産み付けます。突起は結構伸びるので、岩の隙間の奥へと卵を産み付けることもできます。
ちなみに産卵直後の卵の外殻は軟らかく、岩に固定する接着剤のような役割をします。
普段はほとんど見ることができないのですが、死んだ個体から引き出すと意外と大きな器官であることがわかります。
突起の二股部分に挟まれたあたりにowen器官というものがあるのですが(上の図参照)この役割は今一つよくわかりません。腺組織みたいなので、何か分泌して殻の形成に関わっているんじゃないかと推察していますが…
このように、オウムガイはイカやタコに比べると多機能に分化した腕を持っているようで、個人的に非常に興味持っています。
ちなみに、孵化する前の胚には腕の原基が5対(計10ヶ)あって、発生の過程でそれぞれが頭巾や腕に分化します。
(オウムガイが“かぶっている”頭巾、あれは元々は腕だったんですよ)
でも、今回紹介した卵を産み付ける腕については、どのように、どの部分が変化したものなのか、たぶん明らかにされていません。
それが明らかになれば、オウムガイの腕の進化過程がさらに明らかになるでしょうね。
個人的にはかなり興味ある分野です。