昨日、魚類の受け取りに出かけていたスタッフが透明な海藻のようなものを持ち帰ってきました。
見てすぐに、それが海藻ではなくコケムシの仲間(ホンダワラコケムシ)だと気づいたので、さっそく予備水槽の中に大事にとっておきました(仕事あとのお楽しみ…)。
そう、私は海産無脊椎動物なら何でも、見るだけでテンションが高くなるムセキツイ好きなのです(笑)。顕微鏡で観察すると、確かにそれはホンダワラコケムシ。
コケムシは群体性の生きもので、体を構成するそれぞれの個虫から触手を出してプランクトンなどを捕まえて餌にしています。
一見、サンゴやヒドロ虫などの刺胞動物にも似ていますが「外肛動物」という全く別グループに属します。
拡大して観察するとハッとする美しさに気付かされるので、この仲間は好きですね。
そうこうしながらホンダワラコケムシを検鏡していると、意外と色々な生きものが付着していることに気が付きました。
そして、その中で個人的に非常に嬉しい生きものを見つけたのです。
ぬおぉ!ロクソソマですっ!
あ、ロクソソマ(ロクソソマ科の仲間)というのは、コケムシとは別の、内肛動物という、これまたマイナーなグループに属する生きものなのですよ。
体長1㎜ほど。
あまりにもマイナーすぎて内肛動物は通俗名(「○○の仲間、○○類」と呼べる名前)を持ちません。
つまり、名の知られた仲間がヒトの身近にいないということ。そのため、内肛類が何なのかを説明するのが大変なのです(笑)
内肛動物は細い根っこ(走根)でつながった群体性のグループと、一つ一つが独立して生活する単体性のグループがあり、よく見かけるのは群体性の方。
今回見つけたロクソソマは単体性のグループで、私がこのグループを見たのはこれが初めて。
実は、学生のころ、ロクソソマを含む内肛動物の解剖模式図を見たことがあるのですが、この時から海産無脊椎動物にぞっこん惚れてしまった私。
結果(他にも色々と理由はありますが)就職先を水族館に決めたわけですから、内肛動物には思い入れがあります(笑)。
さて、こちらは別個体のロクソソマ。ロクソソマは無性生殖でも増えることができます。
花のつぼみのように見える萼部から幼体が出芽するのですが、ちょうどこの個体では、出芽した幼体が両耳と耳飾りのように見えますよね。幼体はしばらくすると落下して、柄の先端を付着させて独立生活を開始するそうです。
…カワイイ!