前回の飼育日記で2016年に熊野灘の水深200-300mから見つかったヨコエビ2種が新種記載されたと紹介しました。
2種目はイシクヨコエビ科のこちら。ヤドカリヨコエビ Isaea concinnoidesです。体長4.8㎜ほど
本種は漸深海帯に生息するヨコヤホンヤドカリの体表に共生する興味深い生態を持ちます。
Isaea属は本種を入れて5種おり、全て他の大型甲殻類と共生する習性を持つことが知られています。全ての種で脚の先が亜鋏状になっています。
これまで知られていた4種のうち3種が大西洋に分布し、1種だけが北太平洋(ロシア沿岸)から報告されていましたが、今回のヤドカリヨコエビの新種記載により日本沿岸のIsaea属初記録となりました。
ヤドカリヨコエビの学名は、ロシアのIsaea concinnaと似た特徴があることからIsaea concinnoides (-oides, -に似たの意味)となりましたが、体色や脚の構造にはっきりと異なる特徴があります。
ロシアのヨコエビの体色はライラック色で目はダークバイオレットに対し、ヤドカリヨコエビは黄色の横縞で、目は光の反射で銀色に光るが黒っぽい。さらに、ロシアの方は第5-7番目の胸肢のつけねが楕円形だと記述されているのですが、ヤドカリヨコエビは斧型です。
美しくなかなか魅力的なヨコエビです。
(現在、展示はおこなっておりません)
【飼育研究部 森滝丈也】