水族館の予備水槽で熊野灘 水深300mの沖合底引き網で採集されたタコを飼育しています。
その体色から私はアカトラと呼んでいますが、このタコは少なくとも日本では記録されていない種類のようなので、現在調査を進めています。
鳥羽では2013年の入館が初記録で、だいたい年に1-3個体ほど採集されて入館しています。
それほど珍しい種類というわけでもなさそうです。
上の画像の個体は、水槽内で1ヶ月ほど経過した頃のアカトラです(個体識別番号№3・2016年3月採集)
ご存知のように一般的にタコの寿命は数年と言われていますが、このアカトラもこれまでの飼育データから飼育1年程で死亡することがわかっています。
既に入館から1年以上経過しているアカトラ№3も死期が近づいているはずですが、最近までかなり元気でした。
それが、昨日、昼過ぎに給餌に行くと呼吸が荒く既に瀕死の状態…
そして、そのまま看取る格好に…
担当生物の中でも特に好きな個体だったので、寿命だとしてもやはり悲しいものです。
水族館(博物館)の務めとして、いつかきちんと種名を明らかにしてやらなければいけません。
種類を同定するために 体の各部の計測を行い、ホルマリンで固定しました。
標本として保管しておき、今後の研究に活かす予定です。
腕の中程あたりの吸盤が特に大きく目立ちます。
どこか花びらのような印象。
この個体はオスなので、右の第3腕が交接腕です。
交接腕の先端はメスに精子を渡すための器官(舌状片)になっていますが、このタコの舌状片はかなり大きく、腕の長さの20%ほどにも達するほど。
吸盤の1つはDNAを調べるために100%エタノールで固定しました。
すぐには種類の特定はできないかもしれませんが、いつの日か。
【飼育研究部 森滝丈也】