今回は、前回紹介した部分よりももっとディープなゾーンへ皆さんを誘いましょう…(笑)
現在、鳥羽水族館では飼育下で孵化したオウムガイを3個体飼育しています。
このコ↓は2009年7月生まれの№149。一応、メス。実は、オウムガイは軟体部と殻のすきまから奥をのぞき、生殖器を確認して雌雄判別をします。
例えば、精子を渡す交接腕の有無でも雌雄判別はできますが、交接腕は性成熟しないと大きくならないため、孵化直後の個体でも確実に判別するためには「中をのぞく方法」(正式名忘れました)が確実です。
私はこれまでに300個体以上見てきましたが、まぁ、間違うことはありません。
ところが、この№149はちょっと違った…殻の奥に見える景色が今までのメスとは違うのです。
いや、確かにメスなのですが、あるはずのない白い組織が見えるのです。
それでは数日前に撮影した№149のディープゾーンをご覧ください。
これです↓2→が示す、3本の黄色のバナナのような部分(三角形に配置しています)、これは「包卵腺」という卵の殻を作る部分で明らかにメスの組織です。
ところが、1→でしめした乳白色の組織は通常のメスでは存在しないのです。
きちんと調べないとはっきりとしたことは言えないんですけど、何となく精巣っぽいんですよねぇ。
日を追うごとにどんどん大きくなってきています。
…この個体、もしかしたら雌雄同体?
実は以前からずっとこの疑惑は抱いていました。
ただし、頭足類での雌雄同体の報告はほとんどなく、オウムガイでは多分知られていません。
次の画像は去年の12月、同じ№149のディープゾーン。
白い組織は今よりもかなり小さいですが、このとき既に存在が確認できました。
そしてこの時は、同じ時期に孵化した№150(メス)に比べて包卵腺の発達具合がかなり遅れていたので、精巣?の存在が発達を阻害しているのかと思っていました(今は包卵腺も発達していますが)。組織学的に精査しなければ何とも言えませんが、雌雄同体であればなかなか興味深い事例になりそうです。
ちょっと期待しています。
そうそう、孵化個体の残りの1個体は唯一のオスで、去年の今頃、飼育下で孵化した個体としては世界最長飼育記録更新中!とニュースにもなった№131です。
この個体、何と、今も元気に生存しているのです。もちろん記録は更新中。
そんな彼の話はまた、別の機会に~
本日の№131 ↓