先日、深海底引き網で捕獲されたタコが入館しましたが、残念ながらすぐに死んでしまいました。
種名を調べなければいけないのですが、その前に、新鮮な内にニハイチュウの観察です。
(宿主であるタコが死んでもニハイチュウはしばらくは生きています)
ニハイチュウ(二胚動物)は、タコやコウイカ類の腎嚢に寄生する体長数百μm〜数mmの小さな生物です。
こいつらは多細胞生物でありながら体を構成する細胞は40個以下で、器官の分化もなく体はとてもシンプルなつくりをしています。
興味深いのは、この仲間は種特異性を持つので寄主(タコ・コウイカ類)ごとに、異なる種類が見つかることです。
これまでに日本沿岸で30数種類、世界で110種類ほどが見つかっているようですが、特にタコの場合は寄生率が高く、全種類の8割に複数種のニハイチュウが寄生していると考えられるので…知られていない種類を含めると全部で1000種ぐらいはいるんじゃないかと考えられているようです。
普段は腎嚢中で生活していますが有性生殖で生まれた幼生はイカ・タコの体内から海中に泳ぎ出るので、次に取り付くタコやイカの種類をどのように識別しているのか興味があります。
今年は当館に入館したツノモチダコからも新種が見つかり、「ツノモチダコニハイチュウ」「トバニハイチュウ」の和名が付けられました。
そこで、見慣れないタコが手に入ったら、腎嚢をチェックしてニハイチュウ探しに熱中しています。
今回の個体の中にいたのはこんなニハイチュウです(25目盛り=0.1㎜)
①頭でっかち
ところで、ニハイチュウの頭部形態は4タイプ(円錐形、帽子形、円盤形、不定形)があるそうで、腎嚢中に4種類以上が共存するときに不定形のタイプが現れるようです…
⑤おっ!コイツが不定形タイプ…?このタイプは初めて見ました。
そして最後に滴虫型幼生です。
腎嚢中の個体密度が高くなると滴虫型幼生が生み出されてタコの尿と一緒に海水中に泳ぎ出て新しい宿主(タコ)に移動します。
皆にウケるカワイイ生きものだとは決して言えませんが、タコのおしっこの中でニョロニョロ泳ぎ回る姿はやっぱりカワイイですね(結局、言ってます)