オウムガイ好きの皆さんならご存知でしょう。オウムガイ類の殻の内部はいくつかの部屋(隔室)に仕切られています。この隔室の中は気体で満たされていて、浮力調整に役立っています。
隔室はオウムガイが成長するたびに増設されていきます。隔室の壁が十分に石灰化していないうちは、内部は海水に近い成分の液体で満たされていて、壁の強度が増すと徐々に気体に置き換えられます。
液体と気体を置き換えるのは、隔室を連ねる石灰質の連室細管の中を通る軟らかな連室細管索の働きによるものです。
連室細管索の表面にある細胞によって液中のナトリウムがオウムガイの体内に取り込まれると液の濃度が薄くなります。すると液は気化して、結果、隔室の中は液体から気体に置き換わるのです。
この液体と気体の置換はゆっくりとしたスピードでおこなわれ、素早い出し入れはできません。
昔は『オウムガイは海中深く潜る時に殻の隔室内に液体を満たして重量を増やし、逆に、浮上する時には、その液体を体外に捨て去って体を軽くして浮かび上がる』と、広く信じられてきましたが、これは誤りです。
オウムガイが上下するのは、漏斗から吹き出す海水の推進力(ジェット推進)によるものです。
ちょっとした豆知識です。
【飼育研究部 森滝丈也】