先日、石川県(和倉温泉)で開催された水族館技術者研究会でテンプライソギンチャクについて発表してきました。
テンプライソギンチャクとはカイメンと共生する珍しい生態を持つイソギンチャクで、2006年に神奈川県三浦市の磯で初めて採集された後、今も新潟県の佐渡島、鳥羽の3地域でしか確認されていません。
観察例が少なく、生態はほとんど不明なので、水族館の飼育で明らかになった生態情報を発表しました。
謎の生態のひとつが、飼育中に出現する「匍匐するイモムシのような個体」。これは何で、どうやって出現するのか?
水槽で観察をして正体がわかりました。
夕方、徐々にイソギンチャクの下部が膨れて…(矢印)
翌日の朝までにちぎれてマンジュウ型に変化します。
その日の夕方までは同じ場所に留まりつつ、徐々に細長く伸びていきます。
そして、細長く伸びると、翌日の朝までに別の場所に移動していきます。
というわけで、今回の観察で、匍匐する個体は無性生殖で増える“分裂個体”であることが明らかになったのです。こんな生態を持つイソギンチャクはこれまでに報告がないようです。
この分裂個体はゆっくりと移動していきますが、最終的にどのようにイソギンチャクへと姿を変えるのか?こちらも詳細が観察できたので発表しましたが、その過程についてはまた別の機会に…
【飼育研究部 森滝丈也】