去年の話になりますが、閉館間際の館内で若い男女に声を掛けられたことがありました。
女性の方がイソギンチャクが大好きで色々と質問をしてこられました。本当にイソギンチャクが好きなようで、話をしているうちにこちらもどんどんイソギンチャクを紹介したくなってきました。
決して、その女性の笑顔が魅力的だったからというわけではなく(もちろんそれも理由のひとつですが…)老若男女問わずマイナー生物が好きな人とは色々と話をしたくなるものです。
もう少し早く声をかけてくれれば、いろいろと案内できたのに…と内心思いつつも、残りの10分で館内のイソギンチャクを駆け足でざっと案内しました…そんなエピソードを昨日ふと思い出しました。
実は、先月27日に熊野灘 水深300mから見慣れないイソギンチャクが入館して、予備水槽で飼育中なのです。
一見すると普通のイソギンチャクに見えますが、触手は24本と少なく、体壁を透して隔膜が目立ちます。
ん~気になります。
でも、イソギンチャクの仲間は解剖して体の中の隔膜と呼ばれる膜の枚数や配列を調べたり、遺伝子などを比較しなければ種類の特定は難しいそうです。外見を見るだけでは種類はほとんどわからないとか。
それでも画像を見ればどの仲間(科)ぐらいはわかるかな?と、昨日 付き合いのあるイソギンチャク研究者(博士課程の学生)に問い合わせてみることにしました。
ところが、残念ながら判断がつかないとの返事。
それで、彼の師匠でもあるイソギンチャク分類の第一人者の研究者に判断を仰ぐことになったのですが…
その研究者の方ですら「見たことがあるけれど種類がわからない」のではなく「実際に見たことがない」イソギンチャクであることが判明したのです。なんと!
つまり、画像を見る限りでは、科名どころかその上の分類群すら全くわからない、謎イソギンチャクであるということが明らかに…
熊野灘にはまだまだこんな生きものがいるのですねぇ。
このイソギンチャクは、しばらく予備水槽で様子を見たのち、へんな生きもの研究所で展示したいと考えています。
【飼育研究部 森滝丈也】