熊野灘の漸深帯(300mあたり)の生物の多くは、毎月の沖合底引き網採集で手に入れていますが、業者を通じて購入することもあります。
先日も業者から商品(生物)リストが送られてきました。
すぐに欲しいめぼしいものは無かったのですが、ニチリンヒトデが気になりました。
実は、昨シーズンと今シーズンの2回、ニチリンヒトデの仲間の歩帯溝(管足が並ぶ部分)からAsteromyzostomum属スイクチムシ(多毛類・ゴカイの仲間)を見つけているからです。この仲間はこれまでに北極から3種、南極から1種が知られているだけで、日本近海から見つかったという報告はありません。
これまでに何度となくニチリンヒトデは目にしていますが、このスイクチムシに遭遇したのはたったの2回だけ。
つまり、見つかる確率はかなり低いわけで、業者から数匹を購入したところで、それに寄生している可能性なんてほとんど0…のはず。
…でもなぜか今回は気になります。
そこで、別のヤドカリを注文するついでに、このニチリンヒトデ4匹も購入したのですが…
届いた箱を開け、ビニール袋を開封してヒトデを確認。
その瞬間、雄叫びをあげましたよ!
1匹のニチリンヒトデにバッチリ寄生しているじゃないですか!
なんという引きの強さ。
さて、このスイクチムシは既に知られている種類なのか?それとも…
今後、研究者の力を借りて明らかにできれば良いですね。
【飼育研究部 森滝丈也】