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鳥羽水族館 飼育日記 鳥羽水族館 飼育日記

「ありがたし」

 

 

 

 

 

 

こんばんは。「いま」です。

 

 

 

 

今回の飼育日記は、書くべきかどうかすごく迷いました。

ですが、応援してくださった皆さまに、そしてなにより、

1頭のセイウチのためにこの日記を書くことを決意しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず始めに、いきものとは全く関係ないのですが、皆さまは「ありがとう」の反対語は知っていますか?

 

 

私たちがよく(?)口にしている「ありがとう」

 

 

~してくれてありがとう。

~教えてくれてありがとう。

 

 

日常会話でも、この言葉は人が人として人間社会で生きていくに

とても大切な言葉の1つだと思います。

 

 

「ありがとう」 漢字で書くと 「有難う」 なんですが、

では「有難う」の反対語は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「有難う」↔「当たり前」なんです。

 

 

 

「当たり前」から反対を考えると、

 

有ることが難しい、大変まれである。

 

めったにないことにめぐりあう。

 

奇跡。

 

といった表現が出てきます。

 

実は、「ありがとう」という言葉にはこんな意味があったみたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は変わりまして、私は、2年前この鳥羽水族館に入社しました。

「水族館でショーがしたい!」「大好きないきものの近くで仕事がしたい!」といきまいて、

がむしゃらに自分らしくいた結果、いつの間にか鳥羽水族館で、

いつの間にかセイウチの担当をして、いつの間にかセイウチパフォーマンス笑をやっていました。

飼育係になり1年も過ぎたころ、いつの間にかポウとクウが交尾して、いつの間にかクウの妊娠がわかり、

いつの間にかポウ1頭でショーをして、いつの間にか新しい水槽ができ、いつの間にかツララが来て、

いつの間にかクウのお腹がパンパンになり、いつの間にかクウが出産して赤ちゃんが生まれました。

 

 

 

決して、この2年間のすべてが順調とは言えませんでしたが、

何とか大きな壁も乗り越えて、割かし波に乗った日々でした。

 

 

 

セイウチの繁殖は、国内では、2か所の水族館でしか成功しておらず、

担当者も当館のセイウチ「クウ」も初めてのことで、この15カ月間かなりのプレッシャーや不安がありました。

そんな中、「クウ」は妊娠維持から出産までも割とスムーズに行い、出産直後はヒヤッとすることもありましたが、

見たところ異常はなく、元気な赤ちゃんが生まれました。

 

 

一時的に「クウ」と赤ちゃんを離すことはあったものの、「クウ」が必死にお母さんになろうとしている姿や、

赤ちゃんが必死にお乳を探して、一生懸命に生きようとお母さんのお乳を吸う姿に、当館スタッフ、もちろん担当者は、

少しの不安はあるものの、胸を撫で下ろしました。

 

 

 

しかし、ほっとしたのも束の間、ある日を境に、赤ちゃんの容体が急変。

陰部からの多量な出血。瞬く間に、元気だった赤ちゃんが息を引き取りました。

 

 

 

 

死因は、先天性の異常による失血死でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、本当に、何が起こったのか、理解ができませんでした。

 

 

まったく、想像もしておりませんでした。

 

 

 

 

 

 

ポウちゃんがいつも元気に毎日2回のショーが当たり前。

 

 

クウちゃんが水槽ガラス面でぼーっとしてフリスビーくわえているのが当たり前。

 

 

ツララがお気に入りの白い浮きのおもちゃで遊んでいるのが当たり前。

 

 

当館のセイウチたちの日常ではこんな当たり前のことが繰り返されています。

 

 

赤ちゃんも、クウのもとに生まれ育ち、大きくなって、みんなを笑顔にしてくれる。

 

 

誰もが当たり前のように描いていたそんな未来が、急に見えなくなりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に、悔しくて、苦しくて、悲しくて。

 

 

他に何かしてあげられることはなかったのか?

 

 

本当に助けることのできない命だったのか?

 

 

自問自答をずっと繰り返していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもそんなとき、こちらの事情はお構いなしに、

ポウちゃんは水槽越しで鳴くんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お腹が減った」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなポウちゃんを見たら、

「あぁ、まだ終わってない」って強く思いました。

 

 

 

 

 

 

うちには「ポウ」「クウ」「ツララ」がいる。

 

 

 

今を生きているセイウチたちがいる。

 

 

 

この子たちのために、そして、これから先、生まれてくるであろう命のために、

乗り越えなければいけないと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると同時に、いろんなことに感謝の気持ちが溢れてきました。

 

 

当たり前のようで、当たり前ではない日常に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毎日、職場にいくと元気に迎えてくれるセイウチたち。

 

命があるという当たり前。

 

いや、、、命があるという「有難し」ですね。

 

 

 

 

 

当たり前だと思っていた日常が、実は奇跡の連続なのだと実感しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5日間という短い時間しか生きることのできなかった小さなセイウチ。

 

 

 

ですが、その1頭の小さなセイウチからは想像できないほど、たくさんの経験と想いをいただきました。

 

 

 

本当に感謝しかありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして毎日、同じいきものと、同じ場所、同じ時間を過ごせる「今」に感謝です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1頭の赤ちゃんセイウチのおかげで、

私は、飼育係としても、そして、人間としてもひとつ成長できたような気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毎日が奇跡の連続です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

必ず次に繋げるからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当にありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

p.s.

 

 

乱筆乱文失礼いたしました。

 

 

本当にたくさんの方々から応援、お祝い、お悔やみの言葉をいただきました。

この場を借りて、お礼申し上げます。

 

 

鳥羽水族館、いきものたち、セイウチたちの

明るい未来を作っていけるように日々精進したいと思います。

結果が伴っていないので、今はまだ「口だけ飼育係」ですが、

感謝を忘れずに「口だけではない飼育係」を目指してやっていきたいと思います。

 

 

今後とも、いきものたちをどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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