水族館で孵化したオウムガイとして飼育日数世界最長記録を更新中の№149ですが、先日の朝、見回り時にモゾモゾと…
あ、産卵するかも。
結局、その日は産まなかったのですが、翌日に予想通り産卵していました。
でも、卵殻は不完全で卵黄がはみ出ていました…
ん…最近はこんな感じですね。もう卵も打ち止めが近いかな。
№149はもうそろそろ寿命なんでしょう。残念ですけど。
前に飼育日記で紹介しましたが、これまでに鳥羽水族館で孵化したオウムガイ158匹のうち、1000日以上生存したメスは№10、№113、№149、№150の4匹のみです。https://aquarium.co.jp/diary/archives/10147
つまり、水槽内で孵化して産卵までこぎつけたオウムガイは、世界中でこの4匹だけなのです(№149以外は既に死亡)
そして、台風が近づく本日、少し面白いことに気が付きました。
それは…
№10と№113は孵化後およそ2年1ヶ月後に初めて産卵し(748日齢、762日齢)、孵化後3年間ほど生存(1123日齢、1094日齢)しました。
つまり、ざっくりと計算すれば初産卵の日齢の1.4-1.5倍の日齢で死亡したことになります。
一方、№150はおよそ2年半で産卵を開始(932日齢)、4年半ほど生存(1642日齢)したから、こちらも計算すれば初産卵の日齢の1.7倍ほどが寿命。
これって、もしかしたら、少し強引に【オウムガイの寿命は初産卵の日齢の1.4-1.7倍ほど】と言っちゃっていいかも…。
サンプル数はまだまだ少ないですが。
ちなみにオーストラリアの野生オウムガイを調査した研究者の論文によると、野生のオウムガイの寿命は20年以上、性成熟に達するのが15年ほどと推察されるそうです。
これも同様に計算すれば…寿命は性成熟の年齢の1.3倍~となりますね。
おぉ!飼育下のデータと合致しそうです。
次にこの計算式を現在生存中の№149に当てはめてみると…初めて産卵したのがおよそ3年と2ヶ月(1155日齢)だから、寿命は1617-1963日齢となりますね(あくまでも計算上ですが)。
№149は本日で1856日齢ですから、まさに寿命のストライクゾーン、まっただ中!となります。
1963日齢を超えて生存して欲しいなぁ。
ちなみに、野生と飼育下で繁殖年齢と寿命が大きく異なるのは、たぶん水温の違いだと考えています。飼育下では産卵を促すために水温を少し高めで飼育しているため、成長が早く進んでしまうようなのです。
…孵化個体をじっくり育てるためには別の水槽を増設しなければいけませんね。
でも成体になるまで20年以上て…(笑)
参考文献
Dunstan AJ; Ward PD; Marshall NJ (February 2011). Nautilus pompilius life history and demographics at the Osprey Reef Seamount, Coral Sea, Australia. In Solan, Martin. PLoS ONE 6