5月に尾鷲市沖水深180mで採集したウミエラの仲間(ホソウミエラ?)
このウミエラをよく見ると…
盤径2㎜ほどの小さなテヅルモヅルが付着しているのがわかります。
(以前も飼育日記で紹介しました)
https://aquarium.co.jp/diary/archives/10759
採集直後に腕が崩れて、このまま弱って死んでしまうだろうと思っていたのですが…ひとまず状態良く生存しています。
ちぎれた腕の1本を見ればかろうじて枝分かれしていて、これでテヅルモヅルの仲間だとわかります。
画像と別の個体を研究者に送って見てもらったところ、現行の分類ではこのテヅルモヅルはOphiocrene属になるそうです。
Ophiocrene属は小 型のテヅルモヅルだと言われていますが、一方でAstroboa属の幼体ではないかとも考えられているそうです。
果たして、小型のテヅルモヅルなのか幼体なのか?
(最近の分子系統解析の研究では、Astroboa属の幼体であるという説が支持されているようです)
実はテヅルモヅルがどのように卵から成体に成長するのか、ほとんど明らかになっていません。
1970年にオキノテヅルモヅルという北極圏に棲む種の発生 を観察したパテントさんという方がいるのですが、その人がオキノテヅルモヅルの幼体はウミトサカ類のポリプで成長する、と言っているんですね。
このウミエラもウミトサカも同じ八放サンゴの仲間ですから、これが何という種類のテヅルモヅルの幼体かわかりませんが、このウミエラに付着して成長しているのかも知れません。
幸いウミエラは状態良く飼育できているので、小さなテヅルモヅルの成長過程もこのまま継続して観察できそうです。
生体の飼育を通じて生きものの不思議を解き明かすのが水族館の役割のひとつ。
この小さなテヅルモヅルがどのように成長していくのか、今とても興味を持っています。
画像:標本固定した小型テヅルモヅル
ウミエラに付着する小さなテヅルモヅルは、へんな生きもの研究所のオオバンヒザラガイ水槽で展示しています(肉眼ではほとんど確認できませんが)