三重県熊野灘の深海300m付近で採集される「鏡餅ウニ」ことPrionechinus forbesianus(和名なし)
これまでに飼育日記で何度か紹介してきましたが、不思議な重なり行動(マウント行動)を見せてくれます。
これまでの行動をざっくりとまとめると…
①上下の役割は絶対に変わらない ②重なっている日が多いが離れ離れになる日もある ③全てのウニが重なるわけではない …といった傾向があるようです。
去年の5月に№1の上に№2が乗っていることに気が付き観察を続けていました。
ところが、先日、残念ながらその№1が死亡しました(数日前から変調は確認していました)
殻径は16mm、去年の入館時から大きさはほとんど変わっていません。
このマウント行動をする際、上下の役割は厳密に決まっているので、役割の違いが性別によるのではと予想されましたが、これまでに性別は明らかにしていませんでした。
そこで死んだ№1を解剖してみると…生殖腺は卵巣、メスでした。
生殖腺は比較的よく発達していて(殻径16mmはPrionechinus forbesianusとしては最大サイズなのでしょう)
卵径は88μmほど(ちなみにウニ類は大体100μm前後の種類が多いようです)
他の個体の性別が不明なので、現時点では何とも結論づけられませんが、このマウント行動はメスの上にオスが乗るものなのかもしれません。
そして去年の5月からのデータをざっくりとまとめてみました。
観察していない日(白抜き)も多いので、まぁ、ざっくりとしたものです。
【赤色】が№1の上に№2が乗った「鏡餅」状態の日で、【淡青色】が誰も乗せていない日になります。
また、2015年2月からは同じ水槽に別の鏡餅№6、№7も飼育開始しましたが、4月に№7が行方不明になると、№1は№2と№6を二股にかけるようになりました(笑)
こうやってデータをまとめると傾向が…
…いや、全くわかりませんね(笑)
鏡餅になったりならなかったり、あまり傾向性がないようにも見えます。う~ん。
とりあえず、観察したうちの70%は「鏡餅」になっているので、何らかの意味ある行動だとは思いますが。
もう少し掘り下げて調べてみなくては。
【飼育研究部 森滝丈也】