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鳥羽水族館 飼育日記 鳥羽水族館 飼育日記

ロクソソマ萌え

先日、ニューカレドニアオオグソクムシBathynomus richeri の歩脚を顕微鏡で観察してみました。

ここにコケムシの仲間が付着していることに以前から気がついていたからです。

 

コケムシは群体性の生きもので、体を構成するそれぞれの個虫から触手を出してプランクトンなどを捕まえて餌にしています。

一見、サンゴやヒドロ虫などの刺胞動物にも似ていますが「外肛動物」という全く別グループに属します。

拡大して観察するとハッとする美しさに気付かされるので、この仲間は好きですね。

 

あまり知られていない種類かもしれない、期待に胸を膨らませながら顕微鏡をのぞいた瞬間…

のけぞりました!コケムシ以上に個人的に非常に嬉しい生きものを見つけたのです。

ぬおぉ!ロクソソマですっ!

左側がコケムシの仲間、右側の低い方がロクソソマです。

体高1.3㎜ほど。

 

あ、ロクソソマ(ロクソソマ科の仲間)というのは、コケムシとは別の、内肛動物という、これまたマイナーなグループに属する生きものなのですよ。

あまりにもマイナーすぎて内肛動物は通俗名(「○○の仲間、○○類」と呼べる名前)を持ちません。

つまり、名の知られた仲間がヒトの身近にいないということ。

そのため、内肛動物とは何なのかを説明するのが大変なのです(笑)

 

実は、学生のころ、ロクソソマを含む内肛動物の解剖模式図を見たことがあるのですが、その美しさにぞっこん惚れてしまった私。

結果(他にも色々と理由はありますが)就職先を水族館に決めたわけですから、内肛動物には思い入れがあります(笑)。

 

内肛動物は世界で150種類ほどが確認されているようですが、まだまだ見つかっていない種類も多いようです。

内肛動物は細い根っこ(走根)でつながった群体性のグループと、一つ一つが独立して生活する単体性のグループがあり、よく見かけるのは群体性の方。

この仲間は刺激を受けると柄を曲げるのですが、その動きがカワイイ。

今回見つけたロクソソマは単体性のグループです。

 

ロクソソマの仲間は研究者が少なく、サイズが小さな事もあって一般にはほとんど知られていない動物群です。

ロクソソマは他の生物に付着して見つかる場合が多いようで、取り付く相手は一定であると考えられています。

今回、見つけたロクソソマの仲間もニューカレドニアオオグソクムシに付着する種類の可能性が高そうです。

実に興味深い!(研究者に確認したところ本種はロクソソメラ属の可能性が高いようです)

 

 

それと、今回はすぐ近くにコケムシがいたのも興味深いですね。

例えば、これ(下図)は 以前見つけたホンダワラコケムシに付着したロクソソマです(芽体の付き方から、こちらはロクソソメラ属ではなくロクソミトラ属のようです) 。

もしかしたらロクソソマはコケムシ類とおなじような場所を選択しているのかもしれません。

ロクソソマは無性生殖でも増えることができ、花のつぼみのように見える萼部から幼体が出芽するのですが、ちょうどこの個体では、出芽した幼体が両耳と耳飾りのように見えますよね。幼体はしばらくすると落下して、柄の先端を付着させて独立生活を開始するそうです。

ホンダワラコケムシに付着していたロクソソマは幼体がいくつもついていました(下図)

 

 

そして最後にこちら(下図)も別の種類、ウミグモの脚に付着していたロクソソマです(ロクソソメラ属のようです)。

 

これはウミグモに付着する種類なのでしょうか。

ともかく、海の中はまだまだ知らない生きものがいっぱいです。

楽しいですね。萌えますね(笑)

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