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鳥羽水族館 飼育日記 鳥羽水族館 飼育日記

オオベソオウムガイの逆子(逆さ胚)

オウムガイの胚は卵黄の上側で発生が進みます。

これは以前、資料用に撮影した画像ですが、卵黄の上にちょこんと乗っているのがオウムガイの胚。幼殻と黒い目が見えています。

孵化まで水温24℃でおよそ10ヶ月かかります。

ところで、水槽内におけるオウムガイ類の孵化率は非常に低いのが現状です。

年によって差があるものの平均すれば総産卵数の10%を下回るほどしか孵化しません。

ところが受精率自体は50%を超える年もある。…つまり孵化せずに途中で死んでしまうケースが多いということです。

特に発生初期での死亡が目立ちます。

 

孵化予定日を過ぎても孵化しない卵は殻を開けて中身を確認しますが、中に小さな胚殻だけがぽつんと残っていることがよくあります(卵黄は腐って消失)

 

親の水槽(18℃)から孵化水槽(24℃)へ移動するタイミングが悪いのかも。

色々と理由は考えられますが、今ひとつ決定的な状況証拠に欠けていました。

 

そして現在、オオベソオウムガイの卵(1月に産卵)が発生中です。

卵殻の隙間からのぞくと今のところ順調そう。胚の殻も色づいてきました。

同じ時期の卵がもう一つあります。

ところが、こちらは殻の隙間からのぞいてみても胚は確認できず白いモヤモヤばかり。

どうも発生が進んでいないようす。

そこで、本日、処分する前に卵黄を確認しようと、卵殻からそっと取り外してみたのですが…驚きました!

胚があるじゃないですか!

それも本来なら卵黄の上側になければいけない胚があったのは、卵の一番下側!

卵殻の底で大きな卵黄に押さえつけられた格好(想定外に驚いて記録写真を取り忘れました…)

こんな胚は初めて確認しました。逆子(逆さ胚?)のようです。

少し弱っているようにも見えますが、卵殻から取り出して様子をみることにしました。

発生のすすみ具合も遅れているようです。

このあと、ちゃんと成長を続けるか心配ですが、いずれにしても、卵黄と卵殻に挟まれたあの状態では、成長するにつれて圧迫されて、最終的には死んでいたでしょう。

本来なら卵の上側に胚が形成されるはずが、産み付けられた岩から卵を取り外して孵化水槽へ移動する際に卵が上下逆さまになったために本来とは逆の位置に胚が形成されてしまった…そんな可能性が考えられました。

 

これまでに発生初期の死亡率が高かったのは、もしかしたらこれが理由のひとつなのかも知れません。

これを改善すれば、もしかしたらオウムガイの孵化率は今よりも良くなるかも知れません。

【飼育研究部 森滝丈也】

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