今から2年前、水族館の周辺で採集されるクモガタウミウシから体長2cmほどの全身黄色の寄生虫が見つかりました(内部寄生性ウズムシ類、フェカンピア属の一種)
当時、水槽内に正体不明生物が現れた!と話題になり、テレビのニュースにも取り上げられました。
その色かたちから私はこいつを「バナナムシ」と呼んでいましたが 、いまなら「ミニオンムシ」でも良いかもしれない(笑)
さて。
このバナナムシは 成熟するとウミウシの体内から抜け出してコクーン(繭)をつくりはじめるという興味深い習性があります。
論文によると、作り上げた繭の中で産卵をするようです(本種では未確認)
当時は研究者の力を借りていろいろな角度からこのバナナムシについて調べ始めましたが、遺伝子の解析が上手くいかず、正体不明のまま。
もう一度しっかり観察したいと考えていましたが、Hostのクモガタウミウシがなかなか手に入りませんでした…(決して珍しいウミウシではありませんが)
それが、この4月に、複数のクモガタウミウシが手に入り、およそ2年ぶりに飼育を再開することができました。
ところが、しばらく様子を見ていたのですが、今回はバナナムシは全く出現しません。
寄生されていなかったか…と諦めかけた矢先。
本日、出勤したら水槽の中にバナナムシのコクーン(繭)を確認!
どうやら、私が休みだった水曜か木曜日にウミウシから出てきて繭になった様子です。
2つあった繭のうち、新しい方の皮を剥いで中身を確認してみると…
繭を作った直後だからか、まだバナナムシの姿をしていて、ゆっくりと這い回ります。
おそらく、このまま放置しておけば、再び繭を作りはじめるのではないでしょうか…
前回は繭以降の観察ができなかったので、今回は、どのように変化していくのか(産卵するのか)確認できれば良いのですが…
しばらく観察を続けていきます。
ちなみに、バナナムシの繭はへんな生きもの研究所にあるクモガタウミウシ水槽内の石の上に載せてありますが、小さくてわかりにくいと思います…
【飼育研究部 森滝丈也】