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鳥羽水族館 飼育日記 鳥羽水族館 飼育日記

抱卵ヨロイウミグモの姿が見えなくなりました

ウミグモはあまり人気がないようですが、私はこの仲間が好きです。

ちなみに陸上のクモとは異なるグループに属します。

 

生きたヨロイウミグモに初めて出会ったのは、今から5年前の2009年のこと。

それからずっと本種の繁殖成功を願ってきましたが、当時は何を餌にして飼育したら良いのかすら知りませんでした。

 

当時(2009年8月6日)の飼育日記にはこう書いています。

『水族館で生きものを飼育していて「楽しい」のは、本来の生態を推理する時…

生態や餌が解明すれば、飼育のヒントになる。
環境を整えて、水槽内での繁殖だって夢じゃなくなる…はず。

特に、私が好きな無脊椎動物は、そのあたりは「よくわからない」場合がほとんど。

さて。
今回はウミグモの話題です。

うちでは深海底引き網などで採集された、何種類かを飼育していますが、やはり何を食べているのかはっきりしません。
とりあえず、アサリやオキアミを与えているものの、食べている姿は全く確認できず…
反応すらしていない感じ。

それが今朝の見回り時のこと。
水槽に浮かべたザルに隔離している「ヨロイウミグモ」のうち、2匹がザルの外に逃げ出していたのです。

見ると、そのうちの1匹は外にあったイソギンチャクにしがみついているじゃないですか。
取り上げようとして、よくよく見れば…

何と!!
尖った口先(吻)をイソギンチャクの体壁に突き刺しているではありませんか!

どうやらイソギンチャクの体液を吸っているようです。

おぉ!初めて摂餌している姿を見ちゃいました。

この種類の餌については、全く知識がないのですが、ウミグモの中には貝やイソギンチャクの体液を吸っている種類が知られています。

ヨロイウミグモの特徴である、がっしりとした脚やペン先の様にとがった口先(吻)。
あまり動き回らない行動からしても、何かにしがみついて体液を吸っているのでは?と以前から推測していましたが…

やっぱりです。

逃げ出した2匹を連れ戻し、試しにザルの中にイソギンチャクを入れてみました…
すると吻を突き刺して、チューチュー(?)吸い始めまたじゃありませんか!

よし!これで餌はクリアだ!
さぁ!次は繁殖か?(気が早すぎ)…』

 

ははは、今と同じ文体ですね…(笑)

そんなこんなで餌に適したイソギンチャクを特定し長期飼育に成功して、いつか繁殖できればと願っていました…

 

それがついに先日の金曜日、繁殖行動を確認!(9月26日)

続いて翌日には産卵を確認!(ウミグモ類はオスが抱卵します)

…ところが

その翌日に水槽を見ると、抱卵個体が見あたらないじゃないですか!

 

ウミグモは、小型水槽の中に腰高シャーレを入れてその中で餌のイソギンチャクと一緒に飼育しているのですが、シャーレの中にも外の水槽にも見あたりません…

…ふとあることに気が付きました。

それは、ウミグモの仲間はイソギンチャクと(幼生の頃に)共生関係を持つ種が多いと考えられていること。

サンゴイソギンチャクに共生するフタツメイソウミグモの研究報告は有名ですし、このヨロイウミグモと同属の、ベノキヨロイウミグモの幼体がイソギンチャクの体内から見つかったという報告もあります。

 

…ここで推理。

もしかしたら、このヨロイウミグモの抱卵オスはシャーレの中のイソギンチャクの体内(口道)に身を潜めたのではないでしょうか?

 

私の予想が当たるなら、幼生はこのイソギンチャクの体内で孵化するはずです…

経過観察が楽しみになってきました。

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