ウミグモという生きものがいます。
クモに似ていますが、クモの仲間ではなく海産の節足動物の1グループ(ウミグモ類)。
長い脚が特徴的で、脚だけの生きものに見えることから、「皆脚類(カイキャク類)」とも呼ばれています。体は頭部・胸部・腹部の3つに分かれていて、4対の歩行肢が胸部から出ているのですが、体(胴体)のスペースがあまりに少なくて、消化器官や生殖巣など内臓の多くが脚の中にまで入り込んでいるほど。
先日、深海生物展示に力を入れている水族館さんから問い合わせがありました。
死んだヤマトトックリウミグモの脚の中にあったスジ状のものは消化管でしょうか?という内容でした。
確かに、ウミグモの消化管や生殖巣は脚の中にまで入り込んでいますが、あいにく私自身、ヤマトトックリウミグモの消化管をはっきりそれだと認識して観察した記憶がありません…
体が大きく殻の厚いヤマトトックリウミグモの場合、内部を透かして観察する事が難しいのです。
そこで、消化管が見える手持ちの小型ウミグモ画像を送り、ヤマトトックリウミグモとの比較をお勧めしました。
こんな画像です。
体の中の消化管が枝分かれして4対の脚の中まで入り込んでいるのがよくわかります。
この画像では消化管だけではなく、生殖器官(卵の元になる卵母細胞)もはっきり見えていますね。
等と、過去の画像を掘り起こしていると、以前、水槽内で脱皮したヤマトトックリウミグモの画像が出てきました。
これを見ると、硬化する前の殻を透かしてピンクの消化管がよくわかりますね。
たぶん、問い合わせがあったスジ状のもの、ヤマトトックリウミグモの消化管と考えて間違いないでしょう。
ウミグモとは、こんな風に脚の中まで消化管(と生殖器官)が入り込んでいる「へんな生きもの」なのです。