日本近海の水深200〜500mから採集し鳥羽水族館で展示しているイソギンチャクが新種であるということが判明し、「ツキソメイソギンチャク」と命名されました。
熊本大学 くまもと水循環・減災研究教育センター沿岸環境部門(合津マリンステーション)の吉川准教授ら研究チームと多くの研究者との共同研究により新種と判明した本種は、アカモントゲオキヤドカリと強い共生関係を持ち、自らの分泌物でヤドカリの“宿”となる貝殻を拡張し特異な構造を作り出します。また通常の餌以外にヤドカリの糞を栄養源として利用する可能性があることも明らかになりました。
この強い共生関係と淡い桃色の体色を持つことから淡い桃色を意味する「桃花褐(つきそめ)」の語句を用いて相手を想う気持ちを読んだ万葉集の和歌(注)にちなみ、ツキソメイソギンチャク(学名:Paracalliactis tsukisome)と命名されました。
(これまで日本でParacalliactis属が報告されたことはなく、本種が国内初記録となります。)
今回の発表についての詳細はこちら(熊本大学HP)
鳥羽水族館では、こうした深海生物の不思議を皆様に伝えられるよう、研究と展示を進めていきたいと考えています。
ツキソメイソギンチャクは現在、館内Kゾーン「へんな生きもの研究所」で展示しています。
注:万葉集 第12巻に収録された歌「桃花褐の浅らの衣浅らかに思ひて妹に逢はむものかも」
桃花褐(つきそめ)は淡い桃色の古語。歌の意味は「桃花褐に浅く染めた衣のように、心を浅く思って妻に逢うことが、どうしてあろう」(出典:中西進 1981. 万葉集 全訳注原文付(三) 講談社文庫)。
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