2020年に熊野灘の深海から見つかったイソギンチャクの仲間が、この度、新種として論文に記載されました。
2020年9月20日に熊野灘の水深250-500mから底引き網で採集した泥岩の表面に、高さ数㎜の見慣れないイソギンチャクが複数いることに当館の学芸員が気付きました。学芸員が知り合いのイソギンチャク研究者である福山大学の泉貴人(イズミ タカト)氏に確認したところ、学術論文などで正式に分類学的記載が行われていない未記載種であることが判明しました。見つかったイソギンチャクは泉氏との共同で研究を進め、新属新種 ゲンシカイキNeotenactis amateras として、2025年3月20日に学術雑誌Zoological Science, 42(2):(2025)に掲載されました。
本種はこれまでに公式には日本で確認されていなかった「ムカシギンチャク科」に属し、北西太平洋における本科の初記録となりました。さらに、科として約130年ぶりの新種であるばかりでなく、新属であることも明らかになりました。
ムカシギンチャクの仲間はイソギンチャクの幼生に似た非常に単純な体のつくりをしていることから、以前はイソギンチャクの祖先形だと考えられてきましたが、最近の研究では、この特徴は原始的な形質ではなく、二次的に単純化(幼形成熟)したものだとする説が有力になっています。
今回、新種記載されたゲンシカイキは「普通のイソギンチャク」と「ムカシギンチャク科」の中間形質を残した種であることが明らかになり、まるで原始の形態(と思われていたもの)に回帰途中のようだ、ということでこの和名が付けられました。学名の属名は「幼形成熟」に、種名は伊勢神宮(内宮)の御祭神である「天照大御神」に由来します。
鳥羽水族館は2013年より熊野灘の漸深海帯の生物調査を行っており、今回のゲンシカイキの記載により、熊野灘から見つかった新種は合計40種となりました。
※現在、水族館で生体の展示は行っていません。
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学芸員が新種のイソギンチャクを発見しました
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